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投手2冠 大活躍の立命館OB DeNA東克樹投手に独占インタビュー

ルーキーイヤーの2018年に最優秀新人賞(新人王)を受賞して以来、不調によりもがき続けてきた左腕が今季、大きな変貌を遂げた。本学文学部を卒業した横浜DeNAベイスターズの東克樹投手は今季、セ・リーグトップの16勝3敗、勝率・842で最多勝と最高勝率の2冠を達成。さらにゴールデン・グラブ賞やベストナインに選出。年間で「勝利に最も貢献した選手」に贈られる「JERAセ・リーグAWARD年間大賞」の初代受賞者となるなど、6年目となった今季、大きな活躍を果たした。本紙の取材に応じた東投手に自身のこれまでと今後に向けての思いを聞いた。

愛工大名電高校出身で2018年に立命館大学文学部を卒業した(球団提供)

—まずは個人タイトルの獲得おめでとうございます。最多勝や最高勝率を獲得した率直な感想を教えてください。

ありがとうございます。率直にうれしいです。プロ野球選手としてタイトルを獲れたってことは自分自身を褒めてあげたいなって思いです。

—左投手によるゴールデングラブ賞受賞は東投手が尊敬している東京ヤクルトスワローズの石川雅規投手以来となりましたが、その点についてはいかがでしょうか。

ゴールデングラブ賞は非常に欲しかったタイトルですし、石川さんが獲って以来ということもうれしいです。また投手としては球団史上初のゴールデングラブ賞だったので名を刻めたことは強く光栄に思います。

—今季で最も印象に残っている自身の試合は何の試合でしょうか。

8月11日のジャイアンツ戦*¹。牧が9回に逆転ツーランホームランを打ってくれたあの試合はすごく印象に残っています。

*¹8月11日の読売ジャイアンツ戦。東投手は先発登板し、8回2失点。DeNAが1点を追う形で迎えた9回表に牧秀悟選手の逆転2ランと大田泰示選手のソロが飛び出し、逆転勝利。牧選手の逆転2ラン直後に涙した東投手はこの試合で約1か月ぶりに勝ち星、今季9勝目をあげた。

 

「覚悟して臨んだ1年」

東投手は2017年のプロ野球ドラフト会議でDeNAから1位指名を受け入団。1年目からチームトップとなる11勝5敗の活躍を見せ、新人王のタイトルを獲得し、今後が大きく期待されていた。しかし2年目は4勝2敗にとどまり、2020年に左肘の内側側副靱帯再建術(トミー・ジョン手術)を受けた。復帰した4年目は1勝2敗、開幕投手を務めた5年目の昨季も1勝6敗に終わり苦しい結果が続いた。

—新人王以来は厳しいシーズンが続いたと思いますが、その時のお気持ちはどのようなものだったのでしょうか。

苦しいシーズンがずっと続いていて本当にふがいなかったです。思い描いた投球からかけ離れていたシーズンが続いて、それが今年の覚悟につながったのかなと思います。逆に苦しいシーズンを味わったからこそ今があるのかなって。

 

東投手は「覚悟して臨んだ1年だった」と今季を振り返る。開幕前に投球フォームを見直し、結果として今季は、球団記録と並ぶ12連勝を含む16勝3敗と勝率・842で最多勝と最高勝率のタイトルを初めて獲得した。

—春に投球フォームを変えられたことでどのような効果があったのでしょうか。

フォームを変えて並進運動の時間が長くなったことで球が良くなりましたし、体の開きもよくなりました。

—活躍の裏で、私生活などで大切にされていることはありますか。

私生活で大切にしていることはオンとオフの切り替えをしっかりすること。野球に集中してばかりだとやっぱり疲れちゃうので、メンタル的にオフの部分を作ることが非常に大事かなと思います。

—東投手は2020年にご結婚されましたがそれによって良い変化はありましたか?

はい。さきほど言ったオフの部分。家に帰れば妻も子供もいますし、本当に疲れた僕を癒してくれるというか。そういったメンタル的な部分で非常に助けになりました。

 

 「祐大のおかげ」

今季は東投手と山本祐大捕手が最優秀バッテリー賞に選ばれた。「祐大のおかげです」。東投手は今季、ヒーローインタビューのたびに感謝を伝えた。山本捕手は東投手が登板した全24試合でバッテリーを組んだ。

最優秀バッテリー賞に選ばれた東投手(右)と山本祐大選手(左) (球団提供)

—東投手にとって山本捕手はどのような存在ですか。

相棒であり、後輩(年下)なんですけど力強いというか、僕を支えてくれる大きな存在だと思っています。

—お二人は試合中また試合以外でどのようなお話をされてきたのでしょうか。

まずは野球。野球以外だったら本当にたわいもない話もします。球場で食事をしながらいろんなことを話しましたし。「祐大のおかげ」って、ヒーローインタビューに祐大が上がったりしたことについてもいじったりとか、いろんな話をしました。

 

 他の選手、OBについて

—試合で警戒されている打者はいらっしゃいますか。

一番は阪神の近本光司選手かなと思います。やっぱり打率の方も残せて出塁率の方も高いですし、塁に出したら足もあるので、いろいろ警戒しなければいけない打者だと思っています。近本さんに関しては大学時代から対戦の経験もあるので、大学時代から近本さんはすごいバッターだとずっと思っていました*²。

*²阪神タイガースの近本光司選手は関西学院大出身で、東投手と同時期に関西学生野球リーグでプレーしていた。

—今季はトレバー・バウアー投手が入団されましたが、バウアー投手による影響だったり、交流はあったのでしょうか。

バウアーの影響といえばやっぱりチームの雰囲気というか、メジャーで活躍してた選手だったのでやっぱり吸収する部分が非常に多いですし、取り組み一つに関してもやっぱり意識というものがもう全然違ったので、そこに関してはベイスターズの投手陣は本当に感銘を受けていたのかなとみんな思っています。

—東投手は今季、オールスターにも出場されましたがそこで交流のあった選手やエピソードはありますか?

一番交流したのは阪神の大竹耕太郎。同級生っていうこともあってやっぱり話しやすかったですし、トレーニング方法であったり、リカバリー方法っていうのをいろいろ聞けて本当に良い2日間を過ごさせてもらえたかなと思います。

—立命館出身の選手の方などとは交流があったりするのでしょうか。

古田敦也*³さんは球場で会ったときに挨拶に行きます。あとカープで今コーチをしている赤松真人*⁴さんも毎回挨拶に行きます。

*³古田敦也さんは1988年に本学経営学部を卒業し、トヨタ自動車硬式野球部を経てドラフト2位でヤクルトスワローズ(現・東京ヤクルトスワローズ)へ入団。名捕手として一時代を築き、2007年に現役引退して以降は野球解説者などとして活躍している。

*⁴赤松真人さんは2005年に本学産業社会学部を卒業し、ドラフト6位で阪神タイガースへ入団。2008年からは移籍した広島東洋カープで活躍し、2019年に現役引退。現在は広島東洋カープにて一軍外野守備・走塁コーチを務める。

 

  「本当のエースになれるように」

来季からは投手陣を引っ張ってきたエースの今永昇太投手が米大リーグに挑戦するため、DeNAは東投手をエースとして迎えることとなる。

—今永投手のメジャー挑戦によって、東投手は来季エースとして迎えることとなりますがそのことについて目標や意気込みをお願いします。

自分にかかる期待っていうのは非常に大きいものがあると思うんですけど、本当のエースになれるように。自分はまだエースじゃないんだっていう思いを持って、1日1日を大切に練習して、ここが限界じゃないっていうことを自分自身に言い聞かせてしっかりと取り組んでいけたらなと思います。

 

 大学時代

東投手は2014年に本学文学部へ入学。本学硬式野球部に所属する高校のOBから「今、左投手がいない」と聞き、登板機会を求めて本学への進学を決めたという。2017年秋の部活引退までに2度のノーヒットノーランを達成するなど、本学を3季連続のリーグ優勝へ導いた。

大学時代はリーグ戦通算41試合に登板し、19勝9敗、防御率1.05

—東投手が思う大学野球の魅力は何でしょうか。

大学野球の魅力はやっぱり高校までと違ってまず金属バットから木製バットに変わりますし、いろんな強豪校からいろんな選手が来て、その中で切磋琢磨して優勝に向けて日々練習する姿っていうのはやっぱり魅力があると思います。試合に関して言えばチーム全体が優勝に向かって応援であったりとか、試合に臨んでいる姿っていうのは非常に魅力的だなって思います。

—大学時代に学んだことでプロで生きたことはありますか。

大学時代に学んだことは忍耐力ですね。卒論の思い出がすごく強いです(笑)

—硬式野球部の後藤昇監督(’15~23年)はどのような監督でしたか。

後藤さんは仏のような存在というか、練習自体も自主性に任せてくれました。やらされる野球じゃなくて自分たちでやる野球というか。そういうのがあったからこそプロ入りすることができたのかなと思います。

—今でも覚えているような大学時代の試合ってあったりしますか。

2回目のノーヒットノーラン*⁵。それはすごく覚えています。

*⁵東投手は2017年5月5日に行われた関西大との試合で、自身2度目となるノーヒットノーランを達成。この試合で許した走者は1回の四球による1人のみ。6者連続を含む毎回の17三振を奪った。関西学生野球リーグでノーヒットノーランを達成した投手の中で複数回の達成は現在も東投手だけである。

—野球以外の大学時代の思い出はありますか。

僕は寮だったんですけど、一人暮らししている野球部の仲間の家に行ってみんなでゲームしたりしたことがすごく印象に残っていますね。

 

2019年以来、本学硬式野球部は優勝から遠ざかり、2023年秋の最終順位は3位。

—最後に、硬式野球部の後輩へ応援メッセージをお願いします。

野球のレベルが高いリーグなので大変だと思うんですけど、もっと貪欲に勝つことを意識して取り組んでもらいたいなっていうのが一番の思いですし、やっぱり僕自身もOBとして立命館大学がリーグ優勝して全国大会に出ることを待ち望んでいるので是非早く優勝してもらいたいと思います。

 

東投手にとって7年目となる2024年シーズン。ペナントレースは3月29日、広島東洋カープを迎え、DeNAの本拠地である横浜スタジアムで開幕する。

 

(取材日 11月15日 聞き手 井上、井本)

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