本学衣笠キャンパスにある学生会館で3月11日、課外自主活動団体が参加する避難訓練があった。訓練では、学生会館1階で火災が発生したと想定。本紙記者も訓練に参加し、参加者と共に煙の中で避難する手順を確認した。(小林)

訓練の背景には、かつて学生会館で発生した火災がある。2022年12月8日の午後6時半ごろ、学生会館1階から出火し、建物の一部が焼けた。産経新聞の報道によると、火災はすぐに消し止められたが、体調不良を訴え病院に搬送された学生がいたという。
課外自主活動は、教職員が不在の環境で活動する機会も多いことから、今回、火災発生時に適切に対応、安全に避難ができるよう、訓練が実施された。

訓練では学生会館の受付が午後3時ごろ、館内放送で火災の発生を知らせた。警報音が鳴り響き、防火シャッターが閉まる中、学生は課外活動を止め、放送に従い、非常階段を利用して屋外に避難した。

今回の訓練では、中央階段に人体に無害な「擬似煙」を充満させ、煙の中での避難を体験できるようにした。火元の想定は中央階段の1階部分。参加した学生は火元から逃げるため、ハンカチで口を押さえて低い姿勢を取るなどして階段を上がった。

記者も煙の中、階段を上がった。上がるほど煙は濃くなり、視界は真っ白に。姿勢を低くすると、かろうじて階段が見える程度だった。先の見えない不安の中、手すりや前の人の姿を頼りに、少しずつ歩みを進めた。

一足先に階段を上がった学生らは、防火戸に設けられたくぐり戸から階段の外へ。非常階段を利用して屋外に逃れようとしていた。
しかし非常階段につながる廊下で、学生が立ち止まっていた。先頭の学生は、非常階段のドアの開け方を知らなかったようだ。後続の学生の協力もあり、なんとか避難することができていた。

参加した学生からは「視界のなさに驚いた」「普段使っている階段なのに、(煙が立ちこめると)避難しづらかった」「姿勢を低くすることの効果を実感でき、有意義だった」などの声が聞かれた。
訓練に立ち会った京都市消防局北消防署予防係長の北原由貴・消防指令から話を聞くと、今回の訓練で「ある事件」を再現したという。
京都市伏見区で2019年7月18日、死者36人、重軽傷者32人を出した「京都アニメーション放火殺人事件」。京アニ第1スタジオ(3階建て)の玄関にガソリンがまかれて放火され、煙が一気に充満。2、3階から下の階に逃げられず、上の階に逃れた結果、多くの人が亡くなった。

「実際の火事では煙は黒く、明かりはつかない。そういった中でどう逃げるのか」。北原消防指令は問いかける。
「避難訓練をやったことがあるかどうかが、火事の時に生死を分ける。避難するのは、体で覚えるのが唯一の方法だ」と強く語る。
もう一度、▽押さない▽走らない▽しゃべらない▽戻らない――の頭文字を取った合言葉「おはしも」を思い出すよう、学生に求めた。
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衣笠キャンパスで火災が起こった際は、119番通報後、キャンパスインフォメーション(至徳館1階、075-465-8144)に報告する。その後、安全第一を基本として、可能であれば初期消火を行い、避難時には姿勢を低く、エレベーターを使わずに避難するよう大学は呼び掛けている。