立命館大学新聞のコラム欄「海神（わだつみ）」。記者が日々の思いを語ります。
私の父はＬＩＮＥでいつも写真や動画だけを送ってくる。この前は、ウインナーを炒めているだけの動画が送られてきて「早起きして朝食を作っている。えらいだろ」のアピールなのか何なのか、意味不明でふきだした。それに対して私も無言で意味のない写真だけを送りつける。
今ではこんな風に一応やり取りできているが、ここに至るまでには時間がかかった。中学時代、思春期真っ只中の私は亭主関白な父のすること全てにいらつき、口をきけば大喧嘩。会話にならないため、最終的に話さなくなった。
そんな冷戦状態の父と娘に変化が起きたのは大学受験が近づき、塾に通いだした頃である。父の仕事終りと私の帰りが被るようになったため、車で拾ってもらうようになった。助手席に置いてある荷物を勝手にどかして乗り込み、私が一方的にその日の出来事を話しだす。「なんだよそこ座るのかよ」、「よくしゃべるなあ」と文句を言ってくるが、どこか楽しそうなのがバレバレだった。雪解けといったところだろうか、長く続いた戦いはこの頃やっと終わったように思う。
父の無言ＬＩＮＥは私への安否確認だと解釈している。新入生の皆さんには新しい生活を思う存分楽しんでほしい。ただ、気が向いたときにでもいいし、父のように写真を送るだけでもいい。気にかけてくれる人たちへの連絡を忘れないでほしい。どんな些細な報告もその人たちにとってはきっと意味あるものになるはずだ。
