◆「日本人か、外国人か」 移民2世、二分法に違和感
移民の両親の下に生まれ、大阪で育った男性。本学への入学手続きの際、日本国籍を有しないことからパスポートのコピーなどの提出を求められた。留学生情報登録に「私費留学生」と登録するよう言われた。1年次の基礎演習では「海外から来た学生」と紹介された。
「俺、生まれも育ちも日本やねんけど」。
ウィジェナヤケ・ジョン・ライアンさん(産社2)は2003年、大阪府で生まれた。フィリピン出身の母と、スリランカ出身の父を持つ、移民2世だ。

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産業社会学部では新入生オリエンテーションの座席が指定される。学生証番号の順で座らせることで、学生証を漏れなく配布するなどの目的がある。
ライアンさんは右端の列だった。同じ列の学生の名前はアルファベット表記。外国籍の学生だった。
日本で生まれ育った自分が国籍によって「留学生」とくくられたこと、オリエンテーション時点で日本人と「留学生」を目に見える形で分けられたこと、その二つに違和感を覚えた。
基礎演習では名簿順に自己紹介をした。ライアンさんは最後だった。その前は韓国からの留学生。担当教員から「次も海外から来た学生です」と紹介された。
日本で生まれ育ったことを打ち明けると、教室がざわついた。「ミックスルーツ」だと言えば、スリランカのカレーについて質問された。
他の小集団科目のクラスメートには「最初、留学生かと思った」と言われた。オリエンテーションでの光景を覚えていたという。
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学校法人立命館は、学園ビジョンR2030において「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を実現する学園」を学園像の一つに掲げる。
構成員一人一人が安心して学び、研究し、働くことのできる組織づくりを目指して、各種取り組みを通じてD&Iを推進している。
「制度でも意識でもインクルージョンができていない」。ライアンさんは現状を語る。
近年、外国人技能実習生や外国ルーツの子どもなどに社会的関心が集まる一方、「移動」を経験していない既存の外国籍の人々への理解は薄いままだ。
日本における「移民」はそれぞれルーツも異なり、グラデーションがある。しかし、それが可視化されていないことで制度上でも包括されない。「留学生」を訂正すれば、ルーツについて根掘り葉掘り聞かれる。マイクロアグレッション(無自覚かつ無意識の偏見・差別)を受ける頻度も高くなる。
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ライアンさんの体験を受け、学内のD&Iについて考える学生と教職員の団体が、昨年立ち上がった。
「声を上げていなくても違和感を抱いている学生はいるはず」。多様性に関わるさまざまなテーマを交差的に扱い、制度と意識の双方へアプローチしていく。
(井本)
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「『多様性』を考える」はウェブで随時連載します。