加藤周一現代思想研究センター(衣笠キャンパス)と図書館は7月10日、世界的建築家の隈研吾さんを講師に迎え、第5回加藤周一記念講演会を以学館1号ホールにて開催した。対面とオンラインによるハイブリット形式で、約450名が参加した。昨年は新型コロナウイルスの影響で開催を断念したため、2年ぶり5回目の開催となった。記念講演会は、戦後日本を代表する国際的知識人で、本学国際関係学部客員教授を12年間務めた、加藤周一の業績を顕彰し、かつ加藤周一現代思想研究センターと加藤周一文庫の活動を広く発信することを開催の目的としている。
隈さんは、加藤周一との共通点について「科学性」と「個別性」だと語った。隈さんの建築と加藤周一の医学では、物事を構造的に捉え、科学的な態度で接する「科学性」と、対象が置かれている状況はそれぞれで全て違うという「個別性」で共通しているという。
隈さんの建築に活かされる加藤周一の思想について、2冊の加藤周一の著書を取り上げた。著書「点・線・面」(岩波書店)を執筆するにあたり、加藤周一の著書「日本文化における時間と空間」(岩波書店)を徹底的に読み返して学んだ。また、科学と人間の個別性における矛盾をどう解くかという疑問に対し、同著「幻想薔薇都市」(新潮社)からヒントをもらったと紹介した。
講演後、衣笠総合研究機構研究員の半田侑子さんが「加藤周一文庫デジタルアーカイブ」を紹介した。仕様変更点や、新たに公開した「手稿ノート」の内容について説明した。
(三井)