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[立人]「金は目標。目的は恩返し」 デフ日本代表・森健司選手

「単に金メダルが目標ではない。金メダルを取って恩返しして感謝を伝えることが目的だ」。本学体育会の空手道部の森健司選手は、東京2025デフリンピックの壮行会で「恩返し」という言葉を繰り返した。大学や空手道部の仲間の支えを力に臨む今大会、金メダルの自信は確かに「ある」。

日の丸を胸にデフリンピックに挑む森選手=京都市北区・衣笠キャンパス

大阪府茨木市出身。生まれつき耳に障害がある。診断は「両側感音難聴」。大学では補聴器をつけて生活している。

小学3年の頃、9歳で道場に入門した。見学に行った空手の道場の風景が、当時好きだった「ドラゴンボール」と重なり「すごくかっこよかった」のがきっかけだった。

デフリンピックのことを知ったのは中学生の頃だった。通っていた聴覚支援学校中学部にいた、出場経験のある先生から勧められた。

17歳で出場した前回大会では、男子形で銅メダル。悔しい思いをした。時間のある大学生活では初心に帰って、自分の空手を基本の中から見出した。

10月29日に開かれた壮行会で演武を披露する森選手=京都市北区・衣笠キャンパス

前回大会はとにかく全力だった。銅メダルに終わってから、視野を広げて練習を積んだ。自分の感覚と外から見たときの様子にズレはないか、鏡を見たり動画を見たりと試行錯誤を繰り返した。

20歳で迎える今大会は「身体的なピークといっても過言ではない」。だからこそ、大学に入学してから、今年のデフリンピックしか考えずにやってきた。その他の大会はどれも通過点でしかなかった。

前回大会で演武した形「スーパーリンペイ」を、今大会でも披露する予定だ。「基本に忠実な形」を心がける中で「より日本らしい美しさ」を表現できるようになった。

手話であいさつする森選手=10月29日、京都市北区

29日に開かれた壮行会。口話と手話であいさつした。その後のテレビのインタビューでは、手話だけで抱負を述べた。

「健常者のようにしゃべっていると、聴覚障害の人のための大会であることが曖昧になるかも」。障害をもつ子どもたちが目指すモデルになろうと、切り替えを見せる。

デフリンピックまでの日々、大学、空手道部の仲間、OBにも支えられてきた。「自己満足の空手ではいけない」。恩返しをしたい思いは、前回よりも明確だ。

(小林)

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