今年の6月より、裁判員裁判対象事件や検察官が独自に捜査する事件の警察・検察官の取り調べにおいて、原則としてビデオ撮影が実施されることが決定した。これにあわせて、人工知能(AI)を用いた言語処理技術を使って関係者の証言を分析し、その証言の信憑性を判断する研究が進んでいる。この研究の主導者は、えん罪救済センターの代表を務める、本学政策科学部の稲葉光行教授だ。
稲葉教授の研究では、AI技術の中でも医療や社会の動向の理解などを目的として使用されているものではなく、AIが行った分析の手順(アルゴリズム)を人間が理解できるタイプのAIを使用している。これにより、裁判官・裁判員は裁判において分析結果が導き出された過程を十分に理解・検証することが可能となる。
取り調べや裁判での記録を心理学や統計学を駆使し、コンピュータで分析する。そしてその記録において、「自白」と「否認」がどのように移り変わっているのかをAIがグラフを作成することで、不自然な変化が起きていないかを判断する仕組みだ。不自然な変化が起きた場合は、その部分を更に調べることで、無実の人の嘘の自白を見つけ出すがことできる。
稲葉教授が開発する技術を活用することにより、冤罪を減らすことが期待されている。 (神野)