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『日米安保体制史』刊行 著者・法学部吉次教授にインタビュー

ふらっと(衣笠キャンパス・存心館)でも販売されている『日米安保体制史』

 10月に本学法学部の吉次公介教授の新著『日米安保体制史』(岩波新書)が刊行された。刊行に際して吉次教授に本書についての話を伺った。(聞き手 石井)

 

―本書はどのような内容ですか。

この本は「通史」というもので、日米安全保障の特定のトピックについて深く論じるものではなく、日米安保を学ぶ上で欠かせない出来事を浅く広く取り扱っています。私自身が一から調べたというよりも、既存の良い研究がたくさんあるので、それらを参照しながらバランス良く書くことを心がけました。しかし、ただ既存の研究をまとめただけでは出版する意味が無いので、自分なりの見方を入れなければなりません。そこで私は、日米安全保障条約にはどのような特徴があるのかということを考えて、「非対称性」、「不平等性」、「不透明性」、「危険性」という四つの特質、すなわち「安保構造」というキーワードを使い、そのような視点で日米安保の歴史を描きました。

―本書の執筆のきっかけは何ですか。

書いた動機は主に3つあります。1つ目は、私のゼミで日米安保の歴史について勉強しようと思ったときに、簡単でコンパクトな、かつ最近の出来事まで取り上げている本が見当たらなかったことです。そこで、学生用の教科書のようなものがあったら良いのではないかと思いました。2つ目は、最近、沖縄の米軍基地問題や集団的自衛権など日米安保に関わることが話題になる中で、過去の経緯がきちんと踏まえられてないのではないかと思うことがあったことです。3つ目は、私はこれまで雑誌などに論文を書いてきましたが、それを一冊の本にまとめてみようと考えたことです。

―学生用の教科書として使うことを意識したそうですが、本書にはそういった要素もあるのですか

もちろん学生だけではなくて、日米安保条約の歴史について関心を持っている一般の方々にも、手に取っていただけるように書きました。いわゆる専門書ではありません。講義で学生にわかってほしいことと、一般の方々にお伝えすべきことは、別々のものではなく、重なり合っています。

―本書の執筆はやはり大変でしたか。

ものすごく大変でした。多くの文献を読み、自分なりにまとめるには、大変時間がかかりました。執筆に取りかかってからは3~4年、アイデアを練り上げてからは7年ぐらいかかっています。

この本をきっかけに…

―大学生にはどのように読んでほしいですか。

安保条約の歴史は、大学に入ってから初めて学ぶテーマだと思うので、予備知識が十分ではない段階で、最初に勉強する手がかりとして読んでいただければ、ありがたいです。この本を読んで、自分の興味のあるテーマが見つかったら、それに関するもっと難しい本に挑戦してほしいと考えています。この本を、これからより深く勉強するきっかけにしてもらえたら、嬉しく思います。

―吉次教授は普段からご自身のことを“ヒストリアン(歴史家)”と表現されていますが、歴史と政治学はどのように結びつきますか。

学生の皆さんは、政治学を勉強する時には現在の政治情勢に関心を持つことが多いと思います。しかし、歴史が積み重なって「今」があるので、「今」を知るためには、歴史を勉強する必要があります。例えば、なぜ沖縄に米軍基地が集中しているのかを知るためには、沖縄の戦後史を繙く必要があります。

―学生へのメッセージをお願いします。

四年間はあっという間なので、色々な経験をしてほしいと思います。卒業後は自由な時間を取ることが難しくなるので、今のうちにたくさんの本を読んだり、映画を見たり、旅行に行ったり、美術館や博物館に行くとよいと思います。学生時代に、できるだけ見聞を広めてほしいと思います。

吉次 公介(よしつぐ こうすけ)

1972年長崎県生まれ。立教大学文学部卒業、同大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(政治学)。沖縄国際大学法学部教授などを経て、現在、立命館大学法学部教授。

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