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「台湾有事」の危機感語る 共同通信・石井暁さんが講演会

本学衣笠キャンパスで2日、産業社会学部で客員教授を務める共同通信社の編集委員・石井暁(ぎょう)さんを招いた講演会が開催された。石井さんは「『台湾有事』に突き進む日米同盟―二度と戦争をしないために―」と題し、自身が執筆した記事を用いて台湾有事を取り巻く情勢を説明。集まった学生約70人は、どうすれば日本が戦争に巻き込まれないか検討した。

中国の基本戦略について地図を示しながら説明する石井さん=2日、衣笠キャンパス

「今ほど戦争に巻き込まれる危険性が高まっていたことはない」――。過去30年にわたり防衛省や自衛隊を取材してきた石井さんは、危機感を募らせる。

中国が武力行使を放棄せず台湾統一を目指すと明言する中、沖縄県の宮古島や石垣島、与那国島など、台湾に近い住民は強い危機感を抱いている。「常に怯えながら過ごしているといっても過言ではない」という。

日中関係について石井さんは「今年、安全保障分野でいろいろなことがあった」と振り返る。8月には中国軍機が日本領空を初めて侵犯。9月には、中国海軍の空母が初めて接続水域を航行したほか、大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発を44年ぶりに公海上に向けて発射していた。

一方、海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」は9月、海自艦艇として初めて台湾海峡を通過した。中国の軍事活動活発化を受けたものとみられている。加えて自衛隊は、南西諸島に部隊の配備を進めているほか、新部隊「海上輸送群」の発足に向けて準備を進めている。

「(事態は)良くない方向に進んでいる。台湾有事は起こるかどうかではなく、いつ起こるかだと言う自衛隊幹部は多い」と石井さんは述べる。

耳を傾ける参加者ら。講演を聞こうと、他キャンパスから駆け付けた学生もいた=2日、衣笠キャンパス

日本は、集団的自衛権の行使を可能にした「安全保障関連法」により、参戦が法的に可能に、敵基地攻撃能力を明記した「安全保障関連3文書」により、参戦が実質的に可能になったと、石井さんは説明する。集団的自衛権を行使して敵基地攻撃能力を利用すれば、攻撃を受けていなくても他国を攻撃できるという。

石井さんは、戦争を回避する方法を考えるヒントとして、中国が主張する「一つの中国」に対する政策▽米軍の作戦行動のための基地利用を拒否できる「事前協議制」の存在▽「事態認定」のための国会承認における野党の力――などを挙げた。

「台湾を見捨てる一国平和主義ではいけないのか、日本の平和と日米同盟のどちらを守るのか、憲法の平和思想を捨てていいのか、議論が必要だ。私自身考え続けていきたい」と語った。

中国包囲網の現状を紹介する石井さん=2日、衣笠キャンパス

また、石井さんは取材を進める中で、特定秘密が含まれているとみられる事案にも直面したという。

特定秘密保護法は、取材活動について「著しく不当な方法によるもの」でない限り認めている。しかし石井さんは、「何が不当かは、時の権力者が決めることだ」とその問題性を指摘。「特定秘密保護法は守らねばならないが、知る権利と報道の自由と対立する。報道の責務について、ジャーナリストを志す学生の皆さんに考えてほしい」と呼び掛けた。

根津朝彦教授にジャーナリストの魅力を問われると、石井さんは「毎日がわくわくで、うまくいかないことがほとんどだが、うまくいったときの喜びは何事にも変えがたい」と話す。「生まれ変わっても新聞記者になりたい」と笑顔を見せ、講演会を締めくくった。

講演会後、本紙の取材に応じた石井さんは「これからの日本を担う若者たちに、日本が戦争に巻き込まれる可能性について、問題意識を持って考えてほしい」と学生への期待を語っていた。

(小林)

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