立命館大学新聞のコラム欄「海神(わだつみ)」。記者が日々の思いを語ります。
大学入試が終わり高校を卒業してからもう1年になり、また春が訪れようとしている。早く大学に合格して自由になりたいと思いながらひたすらに机に向かっていたあのころの自分を思い出すとあの時の熱は今どこにいってしまったのか。志望している大学に入るという目標を終えた今意識は漂流しており、すべてをコロナのせいにすることができないかという堕落した考えを持つこともありとても恥ずかしい。
空いてしまった心と時間を埋めるためアルバイトやサークルをしようと思っていたが、なかなか自分の思うようにいかない。親や友達に相談しても「コロナだから」と慰められる日々である。漂流している船が港に着くのはいつになるのだろうか。
そんなことを考えながら歩いていると夕方の瀬田川と琵琶湖が照っている。この光景を見ると悩みも忘れてしまうほどだ。大学生になるまではまさか生活の一部になるだろうとは考えていなかった。ある日部活に誘われて見た瀬田川と琵琶湖の美しさに心を奪われ、今ではお気に入りの場所となっている。
なぜこの光景に心を奪われるのかと思い調べると、瀬田川は壬申の乱で、琵琶湖は戦国時代に日本の歴史の重要地点となっていた。そしてふと看板を見ると「夕照」と書いてある。なるほど瀬田川と夕日の相性は昔から抜群だったらしい。夕日のまぶしさと湖の雄大さで心が洗われるのと同時に、いつかこのもやもやがこの美しい地に辿り着いてほしいと考えながら再び歩き始めた。
もうすぐ新たな1年が始まり世界は変化して生まれ、消えていく。しかしこの光景は消えないで欲しい。(佐藤)