1月29日、立命館大学衣笠キャンパス横のシェアキッチン「スウィングキッチンYour」にて「ええかげん食堂」が開催された。第1回目の開催となった本イベントでは、関西各地の大学から集まった参加者がグループに分かれて鍋料理を作り、談笑した。
本イベントは堀井隆史さん(文2)と鈴木実来さん(食マネ3)、中村彩乃さん(京都芸術大3)の3人が結成した「ええかげんで委員会」が主催した。3人は同じイベントに参加したことがきっかけで出会い、意気投合したことで共に活動を始めたという。
その背景には、おのおのが経験してきたことを踏まえ、誰もが自分なりの幸せを感じられる空間を創りたいという思いがある。鈴木さんはこれまで、さまざまな食に関わる社会問題解決プロジェクトに携わってきた。このことを振り返り「自分と同じようにより良い社会を志ざし、活動している学生に多く出会ってきたが、いつも違和感を持っていた。自分が本当にやりたいことをないがしろにしてしまいがちで、社会の求める正しさに合わせているように感じた。自分自身もそのうちの一人だった」と話す。その経験から社会への思いも自分にとっての幸福も大切にしてほしいと考えるようになったという。
3人は自分のありのままの姿をみんなで楽しむというコンセプトを、参加者に料理をすることから感じ取ってほしいという思いから、食堂をテーマとした料理イベントを企画した。料理をする過程で、材料の切り方や水・調味料の量など人によってさじ加減が変わってくることに着目し、レシピには「野菜が気持ちよく浸るくらい」というように参加者の価値観が鍋に表れることを誘発する仕掛けが設けられていた。このような視点は料理研究家の土井善晴と政治学者の中島岳志による著作『ええかげん論』(ミシマ社)からアイデアを得たと話す。3人はこの本で触れられている完璧ではない良さや偶然から生まれる新しい価値といった、料理をする際の「ええかげん」、ちょうど良さを社会に対して活動を続けるためにも思い返してほしいとした。
本イベントを開催する中で、主催者の3人自身がおのおのに工夫を凝らす様子が伝わった。中村さんはええかげん食堂のチラシをデザインする際、偶然から生まれる価値に注目し「ええかげん食堂」のタイトルを利き手ではない右手で書いてみたという。中村さん自身は意識していなかったが「げ」の濁点が箸に見えるという声があり、まさに偶然から生まれた魅力となったと話す。
また、実際に鍋料理を作る際にも各グループからは参加者同士が話し合いながら材料や調味料を選ぶ様子が伺え、グループごとに異なる個性豊かな鍋が完成した。1つのグループはおつまみ用に購入されたトマトを使って鍋料理を作り、注目を集めた。そして、参加者は鍋を囲み、さまざまな話題で談笑する様子が見受けられた。
参加した檜垣奈津美さん(国関3)は本イベントを「大学や学年など、それぞれの肩書きを気にすることなく過ごせる空間だった」と振り返り、「全員に個性がありインパクトがあった。今日出会った人ともっと話したい」と今後のイベントに期待を寄せた。
今後の活動について堀井さんは「学内外問わず、さまざまな場所でええかげん食堂を開催したい」と話す。「参加者にとってええかげん食堂が、日常で感じてしまいがちな劣等感などから解放され、自分のありのままの姿でそれぞれがやりたいことを楽しめる空間になってほしい。そして『帰ってきたい』と思えるような時間をつくっていきたい」と意気込んだ。
今後の開催については各運営メンバーのインスタグラムにて告知。
堀井さん@takafumll_鈴木さん@mikusuzukii
(西澤)