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主体的に行動を SDGs地域共創型プロジェクト「むらのこ」

本特集ではこれまで2回、学生が主体的にSDGsに取り組むための方法を取り上げてきた。今回からは数週にわたって、大学や学生の実際の取り組みに焦点をあてて紹介していく。

地域が抱えるさまざまな課題に対して、実際の行動を通して解決プランを考える「SDGs地域共創型プロジェクト むらのこ」(以下、「むらのこ」)が2018年12月中旬から2019年2月にかけて行われた。「むらのこ」は、地域の自律をどのようにすれば実現できるかをワークショップや現地視察などを通して考察し、自分たちで創り上げたプロジェクトや今後のプランを発表・実行まで移す企画だ。

Sustainable Week実行委員会主導のもと、参加者は本学、東京大、滋賀大の学生のほか、近江兄弟社高校の生徒も含め16人を数えた。本学学生をリーダーとした4つのチームに分かれ、それぞれに設定された理念と目標を基にプランを練り上げていく。

今回のプロジェクトで設定された4つの企画はさまざまな視点から地域共創を目指すものだ。

AKIYA★BRAND

 空き家をいかに資源として使うかを考える「AKIYA★BRAND」。甲賀にしかない魅力をブランド化し、地元の高校生に魅力を伝えることで「地元愛」を持たせることを理念とする。理念を達成するために、甲賀市にある空き家を学生のために開放し、勉強や映画鑑賞が可能な秘密基地のような空間として利用する。空き家は同時に地域とのつながりを提供する場にもなる。地元企業や周辺住民も参入することで地域の文化を学生に伝えることができる。参加者は学生や地元との関わり、それを通した発信の仕方を学ぶ。

リラッコミュ

フィールドワークでは実際に温泉に訪れた

   甲賀市の温泉の新たな可能性を探求した「リラッコミュ」。

「若者はあまり利用しない」という一般的な温泉イメージを払拭し、老若男女問わず居心地の良い空間の創出を目指す。企画背景にあるのは温浴施設業界の低迷だ。今までなかった新しい温泉イメージを若者に広め、温泉の価値改革につなげるために何をするかを考えた。最終的には、足湯や温泉で本学学生と地元の人々が温泉のあり方などを考えるワークショップを行うプランができあがった。

事業継承の町、「甲賀」。

現地視察では伝統文化の体験も行なった

「事業継承の町、『甲賀』。」は減少の一途をたどる事業・伝統文化の継承に焦点を当てた。信楽地域の複数の会社に直接ヒアリングを行い、伝承の現状や当事者の生の声と向かい合った。これらの調査から見えてきたのは地元企業の「変化」不足。学生と社会の関わり合いを促進するだけでなく、企業の変化のきっかけになることを目指した。企業の異業種間交流を取り持って、企業同士が連携や新たな発見をする場を提供するために1泊2日の「ぽんぽこの旅」を企画した。

甲賀の魅力を学びに行こうか

実際に小学校を視察してイメージを膨らませた

  閉校した小学校を利用して、甲賀市全体を一つにまとめることを目指したのは「甲賀の魅力を学びに行こうか」だ。閉校となった甲賀市立鮎河小学校を活用した企画で、甲賀市を構成する5つの地域をつなげる。さらに家族で甲賀の魅力を学び、拡散してもらうことで関係人口を増加させる。これらの目的を達成するために考え出したプランが「むらのこ学校」だ。鮎河小学校で甲賀の魅力を家族が体験できる場を創出し、発信するイベントを開催する。今年の8月下旬には体験イベントを行う予定だ。

 これらの企画を参加者たちは1か月半に渡るさまざまな経験を通して、考察しプランを立案した。最初に行われた2回のイノベーションワークショップで甲賀市の課題と必要なこととは何かを考え、アイデアを出し、具体的な調査方法を思案した。甲賀市役所の職員や、学生が登壇した講演会では、プロジェクトのヒントになるような発想や新たな知識を学び取った。

最優秀賞とSDGsオーディエンス賞を受賞した「むらのこ学校たぬき組」

   集大成となる成果発表会は2月3日に開催され、4チームがそれまでの過程を経て創り上げたプロジェクトやプランについて発表した。発表中に聴衆がコメントを付箋に書き、終了後にそのコメントを発表者と共有する意見交換会も行われた。

また、この発表会には審査員として、フィールドの提供者である甲賀市の岩永市長をはじめとした識者5人が参加し、各プロジェクトを評価した。評価基準はSDGsの視点、地域の課題、新規性・独創性、プレゼンテーション、実現可能性の5つ。最優秀賞とSDGsオーディエンス賞には「甲賀の魅力を学びに行こうか(むらのこ学校たぬき組チーム)」、甲賀市長賞には「AKIYA★BRAND(I`m
home チーム)」が選出された。

むらのこ運営に携わり、最優秀賞に輝いたプロジェクトのリーダーも務めた中西優奈さん(生命3)は「『SGDsを用いて』というテーマはあるが、難しく考える必要はない。自身のやりたい活動の一つの指標として使えたらいい。むらのこも同様、自分の好きなことを第一に考えて、それをプロジェクトに繋げていくことが大事」と語る。

また、同じく運営に携わった西野日菜さん(理工3)は今後について「むらのこで取り上げた課題は甲賀市のものだけでなく、全国の問題でもあるはず。ひとまずはむらのこを通して、学生と地域のコミュニティーを形成していくようなモデルを作っていく。その上で学生が自分たちでアプローチしながら、そのモデルを全国へ展開させていくことが目標だ」と力強く語った。

今後「むらのこ」は4つのテーマを統合し、甲賀市の自律を考えていく人を対象に支援を行いながら、プロジェクトを実行に移していく方針だ。

立案する、発信するといった段階を踏んで活動を続けてきた学生たちが、実際に動くという次のステップに進めるか。これからの学生の主体的な行動が、モデルケースとなるキーだろう。                                    (小板橋)

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