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[立人]佐伯和人教授 月・惑星探査技術、南極で

本学宇宙地球探査研究センター(ESEC)の佐伯和人教授。昨年12月に、オーストラリア西部のフリーマントル港から海上自衛隊が運用する南極観測船「しらせ」に乗船した。

向かう先は、南極だ。

南極の海氷の上で写真に納まる佐伯教授。後ろに見えるのが、海上自衛隊が運用する南極観測船「しらせ」(写真はいずれも佐伯教授提供)

専門は惑星地質学。月・惑星の火山を研究している。昨年1月に月面着陸に成功した、宇宙航空研究開発機構(JAXA、ジャクサ)の探査機「SLIM(スリム)」の観測カメラの開発も担った。

かつて月探査を目指した「ルナーA」計画で、JAXAの田中智教授が研究した投下貫入型の観測システム「ペネトレーター」。南極ではその技術を応用し、観測「できる」場所ではなく観測「したい」場所での観測を目指している。

ペネトレーターを実証的に南極で投下し、遠隔地で観測データを得ることが今回の目標だった。

ペネトレーターを搭載したドローン(無人機)。ドローンを用いての実験も行われた

「かぐや」計画から月探査計画に携わり、田中教授と交流があったことから、第66次南極地域観測隊の隊員として参加することに。同行者の本学大学院・谷口亮太さん(当時M1)と高知工科大大学院・浜島岳さん(当時M2)と共に、実証実験に臨んだ。

南極にたつまでの日々は「ドキドキです」。健康上の問題などで行けなくなれば、同行者2人も参加できず、研究計画も見直しが必要だ。南極に立てるのか、気を遣う毎日だった。

流氷帯を進む「しらせ」の船上で写真に納まるペネトレーター試験班(左から浜島さん、佐伯教授、谷口さん)

南極に向けてオーストラリアを出発した「しらせ」は、海が荒れることで知られる南緯40~60度の暴風圏をくぐり抜ける。船の傾斜は最大約15度にもなった。「食堂ではコップがふわっと動くくらいだった」。昭和基地に近づくと、ヘリコプターで昭和基地に入った。

ペネトレーターを持つ同行者の谷口亮太さん。夏の昭和基地周辺では、茶色い地面が露出し「春先の東北の工事現場のようだ」。

昭和基地に着いてからしばらくは、物資の搬入作業で「とにかく忙しかった」。越冬隊の物資補給は、「しらせ」が接岸する夏の間の1度だけ。食料などの物資は大量だ。また割れ目(クラック)が至る所にある海氷の歩き方、スノーモービルや雪上車の運用法など、さまざまな訓練も必要となる。ヘリコプターや車両の使用では調整が必要で「とにかく調整と荷物運びの日々」だった。

昭和基地には、観測に従事する研究者だけでなく、建築・土木など基地を設営し、支える人々も欠かせない。越冬隊の半数以上は、設営・保守のための人員だ。インフラの維持に労力がいることを身に染みて感じた。

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