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[立人]佐伯和人教授 月・惑星探査技術、南極で

開発当初目指していた、ペネトレーターへの地震計搭載はかなわなかった。それでも全地球測位システム(GPS)や通信装置などを搭載。ヘリに載せて南極の空を飛んだ。

昭和基地の南西に広がる白瀬氷河は、危険で立ち入ることが難しい。試験班はその約400メートル上空を飛ぶ。「危ないから学生に任せられない」。ヘリから身を乗り出し、自身の手でペネトレーターを投下した。

白瀬氷河の上空を飛ぶヘリから身を乗り出し、自らの手でペネトレーターを投下した。「ヘリから見る景色は素晴らしかった。見慣れていくが、思い返すととんでもない景色の中にいたんだ」。

ペネトレーターは通信できるよう、尾部が地上に露出する必要がある。1発目のダミーと2発目は想定通りに刺さったが、3、4発目は深くまで潜ってしまった。

当初、電波が確認できたのは一つだけだった。しかし、その電波も2日目には断絶。「ああ、大失敗か」と落胆した。

10日後、ペネトレーターの一つから電波が届き始めた。深く刺さって失敗だと思っていたものだった。それは現在も生きており、氷河の動きを人工衛星を経由して日本に知らせている(4月末時点)。実証試験は辛くも成功した。

雪上車の中でペネトレーターの組み立てを行う浜島さん(左)と谷口さん(右)。雪上車はさながら「移動する基地」だ。寝泊まりする寝室であり、食堂であり、ペネトレーターを組み立てる作業場でもあった

今回の派遣を振り返って「月・火星基地は、南極の昭和基地のようになるのでは」と推測する。

開発が進んでいる、移動機能と宇宙飛行士の居住機能を備えた月面探査車「有人与圧ローバー」は、雪上車との共通点が多い。基地のインフラの維持には多くの労力が必要で、極限環境ではチームの力が欠かせない。

「火星探査は、地球に最接近する約2年2カ月に一度しか行けない。南極観測隊と同じような経験をするんじゃないか」。宇宙探査でどのような基地が必要か、想像を膨らませる。

今後、月探査への貢献を目指す佐伯教授。「若い人々が将来、月や火星が職場になっている社会をつくりたい」と意気込む。南極での経験を基に、月・惑星の研究を進めていく。

(小林)

■写真特集

昭和基地に時々遊びに来たアデリーペンギン。「野良猫のようにペンギンがいるのも変な話」と笑う。
昭和基地で趣味のスケートボードを披露する佐伯教授。スケボーを昭和基地に持ち込んだのは「おそらく初めて」。ケガのリスクを懸念し、南極派遣まで半年ほど控えていたが、実証実験を終えた後に解禁した。
南極を出発後、オーストラリアに向かって南極海を行く「しらせ」の船上で撮影されたオーロラ。夏の昭和基地周辺では白夜が続くため、オーロラを見ることはできない。レグ1の帰路では奇跡的に2夜遭遇し 「本当にうれしかった」。
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