本学は、教育・学修支援センターとSOLIZE株式会社が連携して進める「VR技術を効果的に活用した学習教材の開発」を開始した。本開発に伴い、現在、産業社会学部の野原博人教授のゼミがVR技術を活用した理科教材のプロトタイプを制作している。
本学教育・学修支援センターの中島英博教授は「VRの強みの一つに、物理学、生物学、医学などの分野において、リアルに行うと難しい学習を安全に行える点がある」とする。一方、VR技術を活用した学習に対して、VRを教育現場で使用した例は存在するが、VR技術を活用しなくても良いのではないかと考えられる先行データもあると指摘。中島教授は「VR技術を活用することで学習の質が上がる場面はあるのか、VR技術を目的ではなく、手段として活用し、これまででは経験できなかった学習や、対面以上に良質な学習経験が作れるなら、それはどういうものかということを探究したいと考えた」と開発の出発点となる問題意識を述べた。加えて、野原教授は「自然科学に関するVR技術と私の専門である理科教育を関連付けて、より効果的にVR技術を取り入れることはできないかということを考えていた」と自身の専門分野とのつながりに言及した。
本研究は分析・設計・開発・実施・評価のプロセスで探索的に進められる。4月には企業によるVR技術の体験会が実施された。現在、野原教授のゼミ内で、既存のコンテンツの分析や、未開発の学習内容におけるVR技術のコンテンツ分析、それらに基づく教材設計が行われている。
学生主体で本研究に取り組み、学習者の視点で教材開発をすることが、学習の質を向上させるという目的を達成する上で必要だと指摘する野原教授。今後、開発段階に進めば企業とも協力しながら開発を進めるとし「7月ごろには、いくつかの試作品を作りたい。そして模擬授業で使用し、可能であれば学校現場で実際に使っていただきたい。その中で教育現場の教師、児童生徒、開発した学生の所感などのフィードバックを踏まえ、さらに分析を行っていきたい」と今後を展望する。
野原教授はVR技術を教育に活かす上で、理科では直接観察がなにより大事であるとしながら「直接観察ができない地域や学校事情もある。それらの状況に対して、直接体験に近い形のVR技術を生かした教材を開発できるのではないか」と見据える。また、時間的な制約がない点、視点を自由に変化させた観察も可能である点をVR技術のメリットとして挙げる。一方、身体的負荷やデバイスによる対象年齢の差異、映像ではなくVRを活用する意味を明確化させなければならない点を今後の開発の課題として挙げた。
なお、本開発は、本学の教学政策予算「アフター・コロナを見据えた教学高度化予算」を用いて行われている。同予算は、アフター・コロナを見据えた先進的な取り組みや学園ビジョンR2030を具体化する取り組みを財政面で支援するものである。学部などの組織単位で同予算の趣旨に沿った取り組みを計画、申請し、教学部が取り組み内容を査定した上で予算を配分している。教学部教務課の河合正徳さんは「この取り組みは、学園ビジョンR2030の政策目標の一つである『テクノロジーを活かした教育・研究の進化』という方向性にマッチしており、先進性や全学への波及効果といった点でも同予算の趣旨に合致しているため採択された」とした。(川村)