2022年度より、3回生以上を対象とする教養科目「超領域リベラルアーツ」が開講された。全15回の授業はすべてZoomを利用したライブ配信形式。2022年度春学期には本学大学院先端総合学術研究科の小川さやか教授の担当により「書くことと学問の未来――論文・エスノグラフィを刷新する」というテーマで実施されている。
本講義は2020年度教養教育改革に伴い新たに開設された科目で、教養科目の中で唯一、3回生以上を対象とする先端科目。担当の教員が分野の異なる複数の専門家をゲストスピーカーとして招く複数担当体制で行われる。開講学部は産業社会・文・映像・経済・理工・情報理工・薬・スポーツ健康科学・食マネジメント・経営・総合心理。専門分野の異なる教員と学生が、よりよい未来をひらくために人類が取り組むべき課題を探究する。
学部4年ないし6年を通じて教養科目での学びを続けてほしいとの考えから、3回生以上に向けた科目の提供、学際総合科目「教養ゼミナール」を学修した学生への次のステップの用意を目的として開講される。2018年度から議論を進め、学問分野を超えた学びの場の創出が目指されてきた。教養科目の履修について本学教学部共通教育課の川﨑那恵さんは「自らの専門を相対化し、その可能性と限界を考えていくことが重要。そのためにも、総合大学の特徴を生かした教養科目と専門科目とを往還しながら学問してほしい」と述べた。
Zoomでのライブ配信という授業形式は、コロナ禍で培われたWeb授業の経験から決定された。同講義の立ち上げに携わった本学研究部リサーチオフィスの牧野容子さんは「オンラインになったことで物理的な障壁が無くなり、3キャンパスから学生が参加できる。教養教育での学びを通じて、大学で何を学んできたのか専門性や立場の違う他者に説明できるようになってほしい」とし「さまざまな分野の学生、先生とつながって学習を進められる」と強みを語った。
抽選登録の定員80人に対し、2022年度春学期は開講した学部全てから合計307人の応募があった。希望しても受けられない学生がいることについて牧野さんは「複数担当体制によるクラス運営では、担当教員が専門分野の異なるさまざまな研究者に声をかけ日程調整を行い15回の授業を編成していく。充実した内容で学生にとって魅力的だが、教員の負担も大きい。『教養ゼミナール』の定員は最大35名だが、本科目はそれを上回る80名とした。複数の教員と学生が意見交換できる場として、人数的な限界があり、これ以上定員は増やせないという判断に至った。今後、開講クラスを増やしていけるよう、担当された先生方や受講生からのフィードバックなどをもとに充実させていきたい」とした。
さらに川﨑さんは「教養教育での学びの重要性を実感している学生さんたちも増えてきていると思う。一方、興味のある教養科目を履修したくても、時間割や定員設定のために履修できないなどの問題があることを認識している。現状の打開のためには 声を上げることが重要。学生の立場からも 、受講機会の増加に関する要望、学習したい内容や講師の希望など、公開全学協議会をはじめとする機会を利用して、積極的に議論を起こしてほしい」と語った。
また、本学は教養教育の一環として、準正課プログラム「未来共創リベラルアーツ・ゼミ」(みらいゼミ)を実施している。本学学生・附属校生徒であれば誰でも自分の興味・関心に従ったゼミの立ち上げ、参加が可能(立命館アジア太平洋大の学生も参加可能)。ゼミは約8週間を基本とするサイクルで運営される。
正課外に学びの場を設けることについて川﨑さんは「大学は、自身にとって切実な問いを他者と共有し、立場を超えてフラットに議論できる場所。そんな大学らしさを大事にし、より豊かにしていきたい。大学が提供する科目やプログラムにとどまらず、学ぶ場を自由に生み出していけるはず。コロナ禍で経験したオンラインと対面の両方を活用し、多様な人たちが問いでつながるコミュニティがどんどん生まれてほしい」と語った。