■ラボの取り組み
VR膳所城の製作は苦労が絶えなかったと、山本さんは振り返る。メンバー全員が環境都市工学科で土木分野を専攻しており、建築分野に詳しくなかったため、ラボでの活動は木造建築の基礎を学ぶところから始まった。
復元にあたっては、絵図などの史料のほか、他の城を参考にするなど、手探りで作業を進めてきた。モデリングを担当する本多将大さん(理工3)は「授業では詳細な寸法を基に製作していた。VR膳所城の製作では、絵図などから寸法を予測する必要があり苦労した」と振り返った。
遺構として残っている城門には、レーザー測量を実施。門の形状を計測し作成した点群データを基に立体化した。瓦には城主・本多氏の家紋「立ち葵紋」を再現するなど、細かい部分までこだわった復元がなされている。
製作にあたって、宮大工らの協力も得た。VRを活用してバーチャル(仮想)空間に宮大工とメンバーが入り、3D化された天守や櫓(やぐら)、塀などの細部の構造を見ながら指導を受けた。山本さんは「VRを利用すると2次元の図面を見るより理解度が上がる」と語る。
VR膳所城は、来年春の完成、公開を目指して活動を進めている。今年秋にはクラウドファンディングを行い製作費用を集める予定で、ラボは協力を呼び掛けている。
■地域振興につなげ
ラボでは、全国の人々にVR膳所城を発信することで膳所城を知ってもらい、地域振興につなげることを目標に据えている。VR膳所城は、観光資源としての利用だけでなく、地元の小学生などが歴史を学ぶコンテンツとしての利用など、ニーズに合わせて幅広く活用できると紹介する。山本さんは「VRという最先端の技術と歴史を交え、楽しく学んでもらいたい」と話している。
ラボは、膳所城跡公園と周辺地域を巡るスタンプラリーの開催を企画。隠れた歴史の痕跡を観光資源として提案することを目指す。企画を担当する辻井大翔さん(理工3)は「イベントを通して膳所や大津市を知ってもらい、地域活性化につなげたい」と意気込む。また、同じく企画を担当する本多さんは「VR膳所城を通して、認知度が低い膳所城が地域の人々の誇りになるとうれしい」と語った。
(小林)
■関連リンク
ラボの公式サイト:ホーム | 膳所城 VR Lab. (4d1153.wixsite.com)
ラボが製作した動画:animation膳所城1 (youtube.com)