6・7月号紙面より/WEB版特別編集】
アメリカンフットボールの日本大と関西学院大の定期戦で、日大の選手が関学大のクオーターバック(QB)に危険なタックルをして負傷させた問題。
5月27日、エキスポフラッシュフィールド(吹田市)にて春季関西学生大会の関学大対関大戦が行われ、日大の選手から悪質なタックルを受け、全治3週間のけがを負った関学QBが復帰した。けがの状態や精神状態が心配されたものの、QBとして出場した後半第4Qには38ヤードのTDパスに成功するなど役割を果たし、復調の兆しを見せた。関学QBが事件後の心境を本紙に語った。
日大戦の1プレー目で「何が起こったのか、あの時点では分からなかった。気が付いたらひざと腰の痛みを感じていた」としつつも「タックルに対する恐怖心はなかった」と、当時の心境を赤裸々に語った。
アメフトをやらんかったらよかった―。
1人で考えてしまったときにそう思った。それでも、家族や先輩から「あんたは考えんでいい、気にせんでいい」と言われて、吹っ切れた。日大戦で負ったけがの影響が多少残っており、プレーへの不安はあったというが、けがのことは考えず、あくまで試合のことだけに集中した。
またけがを負わせた日大選手に対して「本人はフットボールをする権利はないと言っているが、うまい選手。フットボール選手として戻って、グラウンドで正々堂々と勝負したい」と気遣いを見せる。
今後のアメフト界のあるべき姿については「アメフトもそうだが、全てのスポーツがフェアなプレーのもと、できるようになっていってほしい。自分自身がどうなるか分からないが、プレーでファイターズ(関学アメフト部)が日本一になるために貢献していきたい」と語った。
関学大の報道はどう見る
日大選手による悪質なタックルを発端とした一連のアメフト問題は社会問題へと発展し、その影響は未だに尾を引いている。
本紙では、その当事校である関学大で報道を行う体育会編集部へ取材を行い、一連のアメフト問題について聞いた。
◆一連のアメフト問題について、どのように考えているか。
このような形でアメフトが社会に広まってしまったことが残念でなりません。アメフトというスポーツが、危険なスポーツという印象がついてしまったと思います。また、事件当初はスポーツの問題という位置づけでしたが、段々日大のガバナンスの問題などに発展し、大きな社会問題に発展したと考えています。
◆日大との試合の様子をどう見たか。
悪質タックルが行われた日大との定期戦には取材に行っていました。春の定期戦ではありますが、前年の甲子園ボウルで日大に敗れたという経緯もあり、関学スポーツでも重要視していました。問題となった1プレー目の悪質タックルはカメラでボールを追っていたので見ていませんでしたが、最後、退場となったプレーは見ていました。かなりもみ合いになる形で審判に止められ、宮川選手が退場処分を受けました。アメフト担当になって3年ですが、初めての出来事でした。また試合開始早々から同じ選手が、立て続けに重度の反則を犯すことにも違和感を感じました。東京からの帰路で、SNSに上がっていた問題のプレーを動画で見て「これはあかんな」と思いました。まさか、そこからここまでの大きな問題に発展するとは当時思ってもみませんでした。
◆被害者となった関学選手のその後の経過
被害を受けた関学選手は、日大戦の前の試合にあたる「KGボウル明大戦」で大学初めてスタメン出場しました。その時はかなりの緊張で、なかなか思うようなプレーができませんでした。試合後の取材でもそのことに触れ「次戦は、緊張なく頑張ります」と意気込んでいた矢先の事件でした。(日大戦で受けた怪我の影響で)全治3週間と診断され、後遺症なども心配されていましたが、無事、5月27日の関大戦で復帰。第4クオーターには、TDパスも決めるなど、劇的な復活となりました。
◆今後のアメフト界のあるべき姿
今回の件で、アメフト界だけではなく、大学スポーツや指導のあり方にまで発展し、社会問題となりました。今後、秋にリーグ戦が行われますが、各大学がフェアプレーの精神で「アメフトが安心・安全なスポーツである」という周知をしていく必要があると思います。
日大新監督に本学OB橋詰氏が内定
後日談として、日大アメフト部の新監督に本学アメフト部OBの橋詰功氏(54)が内定した。
橋詰氏は1994年に立命館大アメフト部・パンサーズでコーチに就任。米オクラホマ大への1年間のコーチ留学を経て、攻撃コーチとしてパンサーズの2003年・2004年の日本選手権、ライスボウル2連覇に貢献した。本学の付属高でも指導経験があり、現在は滋賀・立命館守山高のコーチを務めている。
橋詰氏は今後、日大アメフト部の立て直しを担う。橋詰氏を筆頭として、アメフト問題に終止符を打てるか。本学出身の橋詰氏率いる日大アメフト部の今後、そして日本のアメフト界の行方に注目だ。(花田)