大阪いばらきキャンパス(OIC)の開学5周年を記念した特別企画「金井宣茂宇宙飛行士による被災地応援ミッション報告会」が7月14日、立命館いばらきフューチャープラザで開催された。イベントの模様と本紙インタビューをお伝えする。(水谷)
イベントは昨年の大阪北部地震の被災応援企画として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共催、また産学官連携協力のもと、2部構成で進行した。
第1部は金井さんによる半年に及ぶ宇宙での生活や訓練についての講演、宇宙の実験教室、JAXA職員への質疑応答が行われ、親子連れを中心に約1000人が参加した。日本の実験棟「きぼう」で外科医師・潜水医官として活躍の経験を活かした「健康長寿」に関する数々の実験や船外活動を行なった。それらの宇宙活動の映像やクイズなど釘付けとなった子どもたちからの質問の声は止まらなかった。参加者の伊藤颯真くん(8)は「今まで知らなかった新しいことがわかった。将来はロケットや探査機の技師を目指したい」と目を輝かせた。
第2部はワークショップとしてら本学のスポーツ健康科学部の大学院の研究発表、金井さんの宇宙医学についての講演、金井さんと学生によるトークセッションなどが行われた。金井さんは学生各々の研究ブースを訪れ、意見交換を行った。
金井さんは「宇宙に関する未来のための新しい研究がたくさんある。将来宇宙を誰もが行けるような身近な場所にしていきたい。面白いことがたくさんある中で興味をもった熱中できることを見つけて追求していってほしい」と今後の宇宙の可能性と学生への思いを語った。
ー宇宙飛行士になったきっかけはなんですか。
潜水医官であったこともあり宇宙(ソラ)より海を中心に研究・活動をしていました。人間は水圧の高い深海でも、気圧のない宇宙でも生きていけます。人間の力や可能性に興味、好奇心を抱き宇宙にも行きたいと感じました。
ー宇宙での休日はどのように過ごしたのですか。
映画をみたり、仲間と遊んだりもします。なわとびは無重力のおかげで永遠に二重跳びができますよ。1番楽しかったのはバトミントンですね。おそらく宇宙で初めてバトミントン大会を開きました。体が逆さ向きの状態で打ち合い、難しかったけれど宇宙ならではの体験でした。優勝したので私は宇宙チャンピオンです。誇りに思っています。
ー宇宙のにおいはありますか。
フライパンが焦げたようなにおいです。普段は感じなかったのですが、8時間に及ぶ船外活動から帰ってきた時に、「こげくさいにおいがするぞ」と仲間に聞いたら「これが宇宙のにおいだよ」と教えてくれました。
ー宇宙で食べるものは自分で決めていますか。
専用の栄養を管理する人がいて、カロリーや体の健康状態を把握してくれます。その方の提案をもとに食事しています。ちなみに食事は皆さまが想像しているよりおいしいです。いつでも温かいご飯を食べることもできます。
ー酸素はどうしているのですか。
水を電気分解して酸素を作っています。そして人が呼吸して出した二酸化炭素と水素を再結合して水を生成しています。
ー服はどうするのですか。
定期的に物資だけをロケットで打ち上げて宇宙ステーションに届けてくれます。シャワーはないのですが、服は数日間着用して捨てます。
ー宇宙人はいると思いますか。
私はいると思います。宇宙は広いですから、可能性は高いと思います。夢がありますよね。
ー大変だったことはなんですか。
帰還後、バランス感覚が失われてなかなか1人で立つことができず苦戦しました。宇宙での筋トレの成果もあり、骨や筋肉の変化はあまりありませんでしたが。
ー最後に学生にメッセージをお願いします。
宇宙に関する新しい研究がたくさんあります。将来的に、宇宙を誰もが行ける身近な場所にしたいです。学生には、面白いことがたくさんある中で興味をもった熱中できることを見つけて追求してほしいです。
金井 宣茂(かない のりしげ)
1976年、東京都生まれ。防衛医科大学校医学科卒業。外科医師・潜水医官を経て、2009年JAXA入社。2015年国際宇宙ステーション(ISS)第54次/第55次長期滞在クルーのフライトエンジニアに任命され、日本人11人目として2017年12月から平成2018年6月まで168日間ISSに滞在した。「きぼう」日本実験棟のユニークな実験環境を駆使し、「健康長寿」に関する数々のミッションを遂行した。