衣笠キャンパス敬学館の西向いに「スウィングキッチンYour」(京都市右京区)が9月25日、オープンする。昨年まで半世紀にわたり営業し、惜しまれつつも閉業した「Jazz喫茶 Your」がリニューアルオープンする形。再始動プロジェクトは常連客を中心とする賛同者からの出資金やクラウドファンディング(CF)による計300万円を超える支援を受け、準備が進められてきた。18日には木工芸作家の宮本貞治さんを招いた特別企画が行われ、多くの人で賑わった。

「Jazz喫茶 Your」リニューアルオープン
「Jazz喫茶 Your」は衣笠キャンパスの南西側で1974年、ジャズが好きだった小塚剛正さんが開店した。ランチが人気で、本学の学生や教職員、地域の人々で賑わった。しかし、2022年7月に小塚さんが急逝。開業から48年を迎える昨年9月に閉店を余儀なくされた。
小塚さんと店を切り盛りしていた妻の久枝さんは「この場所がこのまま失われてほしくはない」と常連客に語ったという。常連客らは久枝さんの「どうにかしてこの空間を守ることができないか」という想いに賛同し、再始動に向けて動き出した。学生や卒業生、一般市民からは「何かにチャレンジできる場所がほしい」など様々な意見が寄せられ、実現に向け模索したという。

3月末から大学関係者を含む常連客に出資が呼びかけられ、5月下旬から8月上旬にかけてはCFが実施された。60名を超える出資者から目標額200万円が集まり、CFでは116人から135万円の支援が寄せられた。支援金は玄関部分やトイレの改装費用、利用者が定着するまでの数カ月を乗り切る回転資金などに充てられる。
新たな「Your」は、以前からの厨房やテーブルを活かし、空間と時間を複数人で「シェア」して運営するシェアキッチンの形でリニューアルされる。当初はランチタイムの営業を単独でできる人を探したが難航。複数の出店者が日替わりでシェアする形に落ち着いたという。開店以降は決まった曜日や時間帯に食堂や喫茶店を営業する予定で、再始動プロジェクトのメンバーは学生や教職員、地域の人々によるイベントや出店企画にも期待を寄せる。

「Jazz喫茶Your」は「スウィングキッチンYour」と名を改め開店する。家主として「再始動プロジェクト」に伴走する久枝さんは開店を間近に控え「リニューアルに向けて動き出せてよかった」と話す。久枝さんは「Your」の魅力について「大学のすぐ近くで、教職員と学生とがフラットに接することができる点だ」と話し「そういった空間を残したいと思い、常連の友人たちに相談した」と振り返る。コロナ禍は一人でスマートフォンを見ている学生が多かったといい、「『Your』はキャンパスの外で食事しながらいろんな話ができる場だ。以前のように直接会って対話ができる、出会いの場にしてほしい」と思いを語った。
「Your」開店に先立って
開店を控える18日、Yourリニューアルオープン記念の特別企画として「宮本貞治さんを囲んで」が行われた。「Your」のテーブルとベンチを製作した宮本さんが招かれ講演が行われ、集まった人々は提供されたドリンクを飲みながら耳を傾けた。

今回招かれた宮本貞治さんは、重要無形文化財保持者(人間国宝)への認定が決まっている木工芸作家。宮本さんは小塚さんの同級生であり、その縁から「Your」のテーブルとベンチを製作した。宮本さんは約40年前、人間国宝の木工芸作家・黒田辰秋さんが製作した進々堂京大北門前のテーブルのように、重厚な木のテーブルとベンチが欲しいと小塚さんから相談を受けたという。それを受け、宮本さんが黒田辰秋さんの長男のもとへ弟子入りしていた頃、およそ3か月をかけて制作した第一作が、今も「Your」に残っているテーブルとベンチ。18日の企画では製作時の苦労や小塚さんとの思い出などが語られた。

「Your」は9月25日に開店を控えている。月曜から水曜のランチは沖縄料理、木曜は隔週で天然酵母パン、金曜は月1回おばんざいを出す店が決まり、週末も徐々に出店が決まりつつある。詳細はインスタグラムとFacebookで発信中しているという。
開店に先立ち9月23日には2つの学生サークルとのコラボ企画が予定されている。23日15時から17時にかけて、立命館大学珈琲研究会RCS(以下、珈琲研究会)による喫茶営業が「スウィングキッチンYour」にて行われ、17時からは「JAZZ CLUB」によるライブが本学衣笠キャンパスにある学生会館のミュージックホールにて行われる。ライブは参加費無料といい「ライブの前に『Your』にて珈琲研究会特製の珈琲とスイーツをぜひお楽しみください」と参加申し込みを呼びかけている(申し込みは予約フォームから)。

久枝さんにYour存続の相談を受け、再始動プロジェクトを進めた本学職員の川﨑那恵さんは、今後の目標について「Yourが拠点となり、何かやってみたいことがある人、それいいねとおもしろがって協力できる人が集まって動き出し、実現できる場をつくること」と話す。カフェやマルシェ、映画上映会に語学教室、食を通じた国際交流など、Yourのキッチンやテーブルを活用して、「学生たちにもやってみたいことにどんどんチャレンジしてほしい」という。当面のあいだ、8時から16時までの昼時間帯、16時から22時までの夜時間帯の利用料はそれぞれ6000円、8時から22時までの終日では1万円での利用料金を設定しているが、料金も含め相談に応じるという。相談は「Your」のインスタグラムアカウント(@swing.kitchen.your)や、メールアドレス(your.kyoto@gmail.com)まで連絡してほしいと呼びかける。
また、川﨑さんは学生たちに「真心のこもった出店者の食事を食べに来てほしいし、自由な発想でYourを活用してほしい」と期待し、呼びかける。「小塚さんが残した『KEEP YOUR SWINGIN’』という言葉を、再始動プロジェクトチームで『Your の、そしてあなたの、ワクワクを絶やさずに』と訳した。新生Yourをみんなで作っていこう」
(小林)
