文化・芸術

立命館大学交響楽団 ツアー公演に挑戦、8年ぶり東京公演も

立命館大学交響楽団は8月25日、杉並公会堂(東京都杉並区)にて東京公演を行った。その9日後、9月3日には大阪いばらきキャンパス(OIC)の立命館いばらきフューチャープラザ(大阪府茨木市)にて大阪公演を開催、ツアー形式での夏の公演は幕を閉じた。東京公演と大阪公演合わせて約1,500名の観客を動員した。

1955年創立の立命館大学交響楽団は、現在約150名の団員を擁する。「立響(りっきょう)」の名で親しまれ「国内最高水準の学生オーケストラ」「地域に根差した学生オーケストラ」を目指して日々活動している。2019年に北海道公演、2021年には学生オーケストラとしては珍しいオペラの自主公演を行った。東京での公演は、法政大学との合同演奏会を行った第45回定期演奏会と、立命館大学交響楽団60周年記念第114回定期演奏会につづき3回目。前回の東京公演から8年ぶりとなる今回のツアー公演について、運営の主体となった団員に話を聞いた。

本番直前まで練習が続いた

公演当日まで、大変だったこと

「慣れない場所で、全部が初めてだった」と話すのは、現 団長の由井綾音さん(理工3)。手探りだった当時の様子を振り返りながら、集客に不安を感じていたと語る。蓋を開けてみると、東京公演で約700名と、普段の演奏会と同規模の集客を達成。演奏後、しばらく鳴り止むことのない拍手を受けたという。

公演当日、演奏にのぞむ由井さん

また、技術面で演奏を統括するコンサートマスターの西間木健斗さん(経済3)は「新入団員が入団し、一人ひとりを把握・配置する難しさがあった」と語る。加えて、今回の曲目であるドボルザーク作曲「序曲 『謝肉祭』」「交響曲第6番」「交響曲第9番 『新世界より』」の3曲は、いずれも異なる3人の指揮者が指揮台に立った。同じ作曲者が作った曲を、指揮者の特徴に合わせてニュアンスや表現を調整するのが大変だったと振り返る。

直前まで調整を繰り返す西間木さん

当日の様子

「思いのほか、客席にお客さんが多くて驚いた」と話すのは、ヴァイオリン2ndトップを務める村田昂陽さん(政策3)。慣れない場所で、練習とは条件の違うホールでの演奏となった東京公演を前に「2ndヴァイオリンの音域がちゃんと聞こえるかな」と不安を隠せなかったという。当日は、トラブルもあってコンサートマスター不在のなか練習が進み、村田さんが代わって全体を調整したとのこと。そうして慌ただしく迎えた本番だが、いざ演奏が始まってみると思うように体を動かすことができたという。慣れない地で経験のないホールの中はじまった「序曲 『謝肉祭』」は、豊かな自然や人生を想わせる音色を響かせることができたそうだ。

一時不在のコンサートマスターに代わって全体の調整を担う村田さん(中央)

無事に本番を迎えた西間木さんは「慣れないホールで、まだ本番1回目という中で(演奏が)固かったが、皆んなよくやってくれたなと思う」と当時を振り返る。かくいう西間木さん自身も一曲目はとても緊張したとのこと。前日の深夜まで打ち合わせを重ねていた西間木さんは、宿泊の同室メンバーの気遣いで朝に仮眠をとれたおかげで、気持ちを切り替えて本番に臨めたという。慣れない土地で、受け入れられるか不安だったが、実際はとてもあたたかく迎え入れてもらえたと感じたとのこと。最後の曲となる「交響曲第9番 『新世界より』」を弾き切った刹那、これまでにない景色が広がったと喜びを語る。

演奏を統括する西間木さんは、感謝を音に乗せられたと話す
練習に励む西間木さん(=10月28日、京都市北区)

公演を終えて

ツアー形式での東京公演と大阪公演を経て、さまざまな困難を乗り越えた立命館大学交響楽団の団員は、技術面でも運営面でも新たな局面を迎える。団長として挑戦を続ける由井さんは「東京公演を継続的に行えるようにしたい」と展望を語る。今年で68周年を迎える立命館大学交響楽団は、70周年となる年にオペラを計画中で、いずれは海外公演を目指しているという。
これに向けて、まずは冬の定期演奏会に目を向けるのが西間木さんと村田さん。西間木さんは「次が自分たちが運営する最後の演奏会になるので、集大成にしたい」とした上で「下の代にうまく引き継げたら」と続ける。村田さんは、運営代としては最後の舞台だが、2ndトップという立場では初めてとなる京都コンサートホール(京都市左京区)での演奏に期待をにじませる。「一番印象に残っているのが1回生の時に立った京都コンサートホールの舞台。同じ舞台で、2年前とは違う立場でのることになるので楽しみ。常に勉強し続けなければ」と前向きな姿勢を示した。

演奏中、息を合わせるように意思疎通を図る西間木さん(左)と村田さん(右)

次の公演へ向けて、団員メッセージ

公演に来場した観客に向けて「足を運んでいただいてありがとうございます」と謝意を示した村田さんは「演奏する側は(観客の)一人ひとりの顔が見えるわけではないが、確かにあたたかく迎えてもらった。本当に嬉しい」と喜びを語る。その上で「1stはメロディーを弾いて目立ちがちだが、裏で頑張っている人たちがいる。普段は注目されにくい2ndヴァイオリンにも是非目を向けてみてほしい」と笑みをこぼした。
本番も演奏で全体を引っ張った西間木さんは、音楽と真摯に向き合ってきた経験を踏まえて「しっかり音楽と向き合いたい、自己成長したいという人を歓迎する」と未来の団員へエールを送る。
今回の公演の運営を取り仕切った由井さんは「(物事の)調整の大事さを学んだ。いい経験ができた」と振り返りつつ「いろんな人に応援されていることを感じた。今後も、いろんな人に演奏を聴いていただきたい」と未来の観客へメッセージを送った。
(小野)

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