■市民メディアの力、能登で発揮
「能登の地震・豪雨被害と市民メディア」をテーマとしたセッションでは、災害最前線に立って活動している市民メディアの担い手が登壇。約70人の参加者の前で、災害の現場でメディアとして活動した経験を語った。
登壇したのは、「8bitNews(エイトビットニュース)」のジャーナリスト・構二葵(かまいふき)さんと、災害専門メディア「MuTube(ミューチューブ)」を運営する加藤愛梨さん。元TBSキャスターで「市民メディアアドバイザー」として活動している下村健一さんが司会を務めた。
1月に発生した能登半島地震では、両メディアをはじめとする市民メディアが、マスメディアにはできない動きで真価を発揮していたという。
「石川県内灘町が、マスメディアに報じられていない」――。寄せられた声を受け「8bitNews」は、隙間を埋めるように現地を訪ね、市民の声を報じた。その声は国会議員につなげていった。「報じるだけではなく、ソリューション(解決)につながるよう活動している」と構さんは説明する。
取材に応じた市民の家族から「声は小さいと思っていたけれど、声を挙げれば届くんだ、世の中変えられるんだと気付いた」と言われたことが一番うれしかったと振り返った。
「被災地と未災地をよくする」を理念に掲げ活動してきた「MuTube」。「ソリューションありきで、手段が報道だ」と加藤さんは語る。能登半島地震では、支援物資や手助けをしながら、1回限りの取材ではなく、その人のストーリーを追うようにカメラを回した。「あなた、被災しに来たのね」。そう話しかけられるほど、同じ目線に立って生活することにこだわったという。
災害における市民メディアについて「速報はマスメディアに任せる。とりこぼされて、光の当たらない部分に光を当てて掘り起こすのが役割だ」と話している加藤さん。「さまざまな支援の第一歩には、情報がある」とした上で、「労力をかけて取材したいが、コストがかかる。意地だけでは限界があり、マネタイズ(収益化)していく必要がある」と課題を打ち明けた。
下村さんは「マスメディアでは、なるべく一次情報を取るよう言われるが、当事者発信はもっと深い、いわば『0次情報』だ」と当事者発信の価値に言及。加藤さんは「現場を知っている現地の人が発信していけるようなプラットフォームを目指したい」と意気込んでいた。
セッションの後、本紙の取材に応じた構さんは「多様なメディアの存在や取材手法を知る機会は少ない。(メディフェスのように)垣根なく聞ける機会は貴重だ」と語る。「草の根的に取材して、人と会って発信している人がいることを知ってほしい。ジャーナリストの仕事も捨てたもんじゃないなと思って、仲間になってくれる人がいたらうれしい」と笑顔を見せた。