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講談社クラウドファンディング パートナー提携で支援

株式会社講談社が開始したクラウドファンディング「ブルーバックス・アウトリーチ(BBO)」に本学が最初のパートナー機関として提携した。

BBOは講談社の科学分野に特化した新書「ブルーバックス」の出版経験を活かし、資金不足に苦しむ研究者をサポートするクラウドファンディング・プラットフォーム。科学分野に特化した研究者主眼の支援を行う。支援者への返礼品の選定・発送やサイト上での説明や、研究活動の広報は同社が担い、利用者は自身の研究に集中できる仕組みだ。

本学からは最初に4プロジェクトがBBOを利用。すでに支援募集は終了しており、いずれも目標金額を達成した。今後1年で順次新たな研究を始め、年間で6〜8のプロジェクトを実施する予定だ。

現在は本学以外に津田塾大や京都大なども同サービスの利用を開始している。

本学の4つのプロジェクトから、劣化の激しい「酒呑童子絵巻」の修復を行う赤間亮教授と、水月湖の地層の定点観測を目指す中川毅教授に取材を行った。

酒呑童子絵巻」修復 200万円超え資金調達

修復されることとなった「酒呑童子絵巻」

本学文学部の赤間教授は江戸時代前期に京都で作られたとされる「酒呑童子絵巻」の修復作業について、クラウドファンディングを実施した。7月下旬から9月下旬までの期間に目標額の200万円を達成し、合計で238万5000円が集まった。

「酒呑童子絵巻」は、源頼光とその家臣が「酒呑童子」とよばれる鬼神を退治するという物語を絵巻にしたもので、全5巻ある。この絵巻が作られた1650年頃は絵巻物に対するニーズがあり、制作技術が最も高い時代であった。表には鮮やかな絵の具と金が使われ、裏には銀で装飾がなされるなど豪華なつくりとなっている。「注文した人は貴族や武士など身分の高い人だったのではないか」と赤間教授は推測する。

今まで海外で保管されてきたが、持ち主が日本の研究機関での修復を望んだため、引き受けることになったという。

クラウドファンディングが行われた背景には、近年の世界的な潮流として、人文・社会系の学問に高額な研究費が出にくくなっているということがある。政府や財団による補助金制度もあるが、国宝や重要文化財に指定されるなど、価値が学会によって広く認められた文化財でないと支給されない例が多い。「酒呑童子絵巻」は質の高い絵巻ではあるが、国宝や重要文化財に指定されていない文化財で、財団に修復資金の提供を要請しても全て却下されてしまった。クラウドファンディングを用いることで、このような文化財であっても修復に必要な資金を集めることができる。

また、クラウドファンディングの実施は文化財の修復活動を知ってもらうことにもつながる。高い技術を持つ京都の工房に依頼し、手作業で修復してもらう。何度も開いたり巻かれたりした絵巻は縦に折れ目がついてしまっているが、紙を表と裏に引き離し、落ち着かせることで制作時の美しさに近づけることができる。クラウドファンディングのリターンには、寄付した人を対象とした修復作業見学会を予定している。

修復後は展覧会の開催や、オンラインでの公開を予定している。また、今回のクラウドファンディングで得た資金のうち、目標額を超えた分を活用しVR技術を用いた閲覧方法も検討されている。修復作業の様子は4K8K映像に収められるため、その映像の活用も期待される。(鈴木、堀内)

水月湖研究 ファンの注目集める

本学古気候学研究センターのセンター長を務める中川毅教授は、2017年に出版された『人類と気候の10万年史』で「講談社科学出版賞」を受賞しており、福井県にある水月湖の研究を長年牽引してきた。水月湖には、1年に1枚ずつ溜まっていく地層の縞模様である「年縞」が7万年分積み重なっている。その年縞が出来上がる様子を1年を通して動画で撮影することが今回のプロジェクトの目的だ。

「研究者たちの『成功するかわからない、でも面白そうな研究を試してみたい』という希望を叶えるのに、クラウドファンディングは適している」と中川教授は語る。ブルーバックスの読者には科学ファンも多いため、講談社が主体となって行うクラウドファンディングには注目が集まっている。

リターンとして、個人ガイドツアーや特別セミナーのほか、年縞がデザインされたマスキングテープやジグソーパズルなども用意されている。

撮影された動画はYouTubeなどの動画サイトでの公開を予定している。(波多野、張)

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