本学が独自に運営するウェブ媒体「shiRUto(シルト)」が、11月で開設から6年を迎える。シルトは、大学が従来の公式サイトとは別に運営する「オウンドメディア」。広く一般の人々をターゲットにした情報発信で、大学と社会をつなげる狙いがある。
■接点づくり
近年、多くの大学がオウンドメディアの運営を始めている。関西圏では近畿大が先行して、2015年に「Kindai Picks(キンダイピックス)」を開設。その後、18年に京都大が「ザッツ・京大」を、今年1月には大阪大が「大阪大学Dialogue(ダイアログ)」を開設している。
シルトが開設されたのは18年11月。本学広報課が主導した。
従来から、大学は公式サイトなどで、学生の活躍や教員の研究など多くの情報を、社会に発信している。受け取るのは大学に興味のある人が中心だ。広報課の立岩健一課長は、直接大学に関係ない人が、どうしたら情報を受け取ってくれるのかという点から、シルトが始動したと説明する。
シルトのターゲットは広く一般の人々で、学生や教育関係者に限らない。無関心層との接点づくりを目指し、「大学と社会をつなげる、新しいコミュニケーション」をコンセプトに情報発信を行っている。
シルトの特徴は、従来の公式サイトとは異なり、「立命館」を押し出していない点だ。媒体名に大学名を入れるものも多い中、大学名や「R」のコミュニケーションマークをページ末尾にのみ掲載。スクールカラーは使わず、白と黒を基調とする。
この狙いについて「先入観のない状態で記事を見てもらうためだ」と説明する立岩課長。大学名を押し出すと、無関心層は「自分に関係ない」と避ける傾向があるとみている。コンテンツに興味を持ち、記事を読んだ後で大学名に気付くのが理想だという。
■世の中の関心事
現在、記事は外部の制作会社の2人と立岩課長の3人で制作している。月に1回の編集会議で、掲載した記事のページビュー(PV)数などを分析。2~3か月後の記事を検討している。現在は新規記事を毎月4本掲載するペースだ。
記事の内容は、大学紹介や研究者紹介に限らない。新聞などで情報収集しながら、どのようなことを人々は知りたいのか、「世の中の関心事」をとにかく追究しているという。立岩課長の理想は、疑問に思って検索したときに読んでもらえる状況だ。
シルトで継続して人気のある記事の一つは、「安楽死」をテーマにしたもの。先端総合学術研究科の美馬達哉教授(医療社会学)の解説で、安楽死をめぐり変化する世界の動向を伝えている。立岩課長は「長期的に議論されていて、さまざまな考え方があるものを、学術的に説明することで納得感をもって伝えられる」と説明している。
最近人気が高かった記事は、山崎貴監督の「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」を取り上げたもの。「なぜアメリカを熱狂させたのか」を、国際関係学部の池田淑子(よしこ)教授(比較文化学)が解説した。大きく注目された理由について、映画のヒットなどで話題性が上がり、それに伴うインターネット検索に記事が合致したためだと立岩課長は分析している。
このほか、体や健康に関わるテーマや、駅伝・スポーツなど定期的に話題になるテーマは、継続的に人気があると分析する。
■知るきっかけに
シルトは、開設当初から大きく進展した。
18~19年までの月間平均PV数は約1万8千だったが、23~24年は約10万1千と約6倍。自然検索で、月間1万PV超を獲得する記事もあるという。
現在は、自然検索や、交流サイト(SNS)などからの流入、スマートニュースなどの広告流入をあわせて年間120万PVに上る。立岩課長は「自然検索だけで年間100万PVのメディアにしたい」と意気込む。
立岩課長は、「大学が持つ大小さまざまな知が、世の中の課題解決の糸口になる。シルトを通して、大学の知が社会とどうつながっているか、知るきっかけになれば」と話している。
(小林)