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社会学者がえがく純文学―【本学】岸 政彦教授

第32回三島賞候補となった『図書室』(新潮社)の著者、岸政彦さんは本学大学院先端総合学術研究科の教授を務める社会学者だ。これまでに、エッセイ『断片的なものの社会学』(朝日出版社)で紀伊國屋じんぶん大賞2016受賞、著者初の文学作品である『ビニール傘』(新潮社)は第156回芥川賞候補、第30回三島賞候補となった。2014年に、『街の人生』(勁草書房)を出版するなど、岸教授は社会学的視点で、日常の断片や「普通の人生」を拾い上げる。

『図書室』の表紙

『図書室』の主人公は大阪でつましく暮らす中年女性である。「私」は、ある雨の日にふと昔日の自分を思い出す。10歳の頃、古い公民館の小さな図書室で出会った少年と、世界で2人だけになった日のことを。

街の片隅で、壮大なスケールで繰り広げられた2人の妄想の世界が40年越しによみがえる。読者が無意識に抱える孤独や不安を突き、不思議な読後感を残す。

岸教授は小説を書く際、あらかじめ全体のプロットを用意せず、書き進めていく中で、その先のストーリーを組み立てるのだという。

「これまでは自伝的な小説を書いていたが、今後は小説を書くにあたって普遍的な作風にする必要がある」とさらなる意欲を見せた。本人はあくまでも社会学者だと語るが、小説家としての活動も見逃せない。(今嶋)

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