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海神DIGITAL「りんご」

立命館大学新聞のコラム欄「海神(わだつみ)」。記者が日々の思いを語ります。

りんごのおいしい季節がやってきた。スーパーの陳列棚に可愛らしく並んでいるのを見ると、つい手が伸びてしまう。おもちゃのようにぴかぴか光る表面を、上から下からじっくり眺めつつ、カゴにいくつも放り込む。

「1日1個のりんごは医者を遠ざける」イギリスのことわざだ。りんごは栄養価が高く、カリウムや食物繊維、有機酸やビタミンCなど、体にうれしい成分が多く含まれている。レジに並ぶ人は皆マスクをして、未知のウイルスから身を守ろうとしている。栄養不足による免疫力低下は風邪の原因にもなり得る。りんごを食べて、体調を整えて、これからの冬本番に備えたい。

カバンに詰めながら、ふと、りんごが出てくる物語について考える。「白雪姫」では、りんごは毒を仕込まれ、姫を殺しかけた。しかし「千一夜物語」においては万病に効く薬として活躍する。アダムとイブがエデンの園から追放されたきっかけであるとともに、ニュートンが万有引力を考えついた際のトリガーでもある。立ち位置が話によって極端に異なるのが不思議だが、いずれにせよ、これだけ多くの物語に登場するということは、りんごが世界中で愛されている一つの証拠だろう。

スーパーを出ると、冷たい北風が吹いてきて、悪寒が頭の先まで走った。家路を急ぐと、歩くたびに、りんごがカバンの中で跳ねているのが感じられる。りんごの花言葉は「誘惑」。こんなふうに私は、度々その甘い誘惑に負けては、カバンを重くして帰っている。

(波多野)

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