本学びわこ・くさつキャンパス(BKC)にあるクインススタジアムの地下には貴重な遺跡が眠っている。「木瓜原(ぼけはら)遺跡」と呼ばれるその場所には現在、製鉄炉や須恵器窯が現地保存されている。
(写真:遺跡の入口)木瓜原遺跡では7世紀末から8世紀初頭にかけ、製鉄や鋳造、須恵器の作成が行われていた。日本に律令制が導入されていくなかで、国家的施設の整備に必要な資材を供給する官営コンビナートとしての役割を担っていたとみられている。現在は須恵器窯や製鉄炉、鋳造遺構が保存されている。
特に製鉄炉は、当時の製鉄技術の変遷を知る上で非常に重要な遺構である。1991年から行われた発掘調査では、製鉄炉が操業されるなかで何度も作り替えられていたことが分かった。同時に、鉄の生産が小規模な製鉄炉を複数用いる形から、大きな1基の製鉄炉を繰り返し用いる形へ変化していることが判明したという。
また発掘調査で同遺跡の重要性が明らかになったことにより、県文化財保護課と県土地開発公社による遺跡保存に関する協議が始まった。結果的に「現状のまま未来に残す」という選択肢が取られ、続いて具体的な現地保存に向けた協議が進められた。協議の過程では、発見された製鉄炉や須恵器窯の位置がクインススタジアムの建設予定地と重なっていたことから、大学の配置そのものを検討し直すという案も出たという。ただクインススタジアムは予定通りの位置に作られることが決定したため、製鉄炉保護のため管理設備が整った保存施設が作られることとなった。
(写真:遺跡保存施設の内部の様子)現在は新型コロナウイルスの影響により受け入れを停止しているものの、本来は申し込みをすれば誰でも遺跡を見学することが可能だ。2019年度は42団体、計783人が見学に訪れた。ただその半分以上は市民など一般の見学者であり、学内の見学者は少ない。
BKC地域連携課の梅村亮介さんは「キャンパスに遺跡があることを知らない学生も多いが、まずは1回覗いてくれたら嬉しい」と語る。また、現地で見学者に向けた説明を担当することがある草津市歴史文化財課は「製鉄という古代の生業の一端に思いを馳せ、当時の姿を想像してもらえたらと思う。また、今後の研究課題として取り上げてくれる学生が出てくると大変嬉しい」とのコメントを寄せた。
現在、BKCコアステーション1階では鋳造遺構を切り取ったものや発掘された土器などが展示されている。(石渡)