海神

海神DIGITAL「扉」

立命館大学新聞のコラム欄「海神(わだつみ)」。記者が日々の思いを語ります。

ある日、SNSを見ていると一つの投稿に目が留まった。それは、中学生の頃の知人による時給1万円のアルバイトを募集するというものだった。私はそれを目にし、何か全くの別世界に続く扉を偶然目にしてしまったような気分になった。その扉の向こう側にはアルバイトの合法性、非合法性にかかわらず、私がこれまでの人生で育んできた倫理観に抵触する何かが存在するであろうことは想像に難くない。

近年報道される大学生の薬物汚染から象徴される通り、このような別世界と思えるような場所と私たちの距離感は極めて近づいてきているように感じる。当然、我々大学生にとって知る世界を増やし、自らの可能性を広げていくことは本懐である。しかし、闇雲に世界を広げていくことには常に危険性がはらんでおり、一度取り込まれてしまうと元々所属していた社会・共同体に復帰することが困難であることを再認識しなければならない。

そのようなことを考えるにつけ、私は彼について思いをはせずにはいられなかった。高校以降は疎遠気味だったが、大学進学と共に、ゴシップ的な側面が強い彼に関する情報をよく耳にするようになった。彼は今、私たちが出会い別れた頃とは全く異なった行動指針・倫理観に基づいて生きているのだろう。おそらく今後どこかですれ違い、話し掛けられたとしても私は他人の振りを貫くだろう。私はフォローを解除し、彼との縁の切れ目を感じつつその扉を見送った。

(大池)

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