海神

海神DIGITAL「予防接種の父」

立命館大学新聞のコラム欄「海神(わだつみ)」。記者が日々の思いを語ります。

緒方春朔(しゅんさく)は秋月藩の藩医である。 当時、数年毎に流行し、猛威を振るっていた天然痘の予防接種の方法である人痘種痘法を研究し、後に主流となるイギリスの医師ジェンナーによる牛痘法の発明に先立つこと6年、日本で初めて成功させた。いわば、我が国のワクチン予防接種の父だ。

春朔の研究した人痘種痘法は、粉末状にした天然痘患者の皮膚のかさぶたを鼻から吸引させるという方法であったが、生身の人間の体での実験ができずにいた。そんな中、協力を申し出、自らの二児を実験に提供したのが、春朔を支援してきた大庄屋、天野甚左衛門であった。春朔は、最悪の場合、死の恐れもあるとして、当初は申し出を断るが、甚左衛門の熱意に負け、承諾。実験が行われた。接種後、二児は天然痘の症状を発症するも、10日ほどで回復。実験は成功した。その後、春朔は、この方法を全国に広めていく。

新型コロナワクチンの接種が進んでいる。日本で接種が行われている新型コロナワクチンは、いずれも、新型コロナウイルス感染症の発症を予防する高い効果があり、重症化を予防する効果があるとされている。今日の医学の進歩は、春朔や天野甚左衛門の、知恵と勇気と努力の延長線上に存在することは、言うまでもない。

先人たちへの敬意と、今この瞬間も医療や介護の現場の最前線で、感染症対策に従事している方々への感謝を胸に、2度目のワクチン接種を受けた。(石原)

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