立命館守山中学校・高等学校(滋賀県守山市)は1月から、メタバース(仮想空間)を利用した「デジタル保健室」を開室する。デジタル保健室は、同校の保健室を3D空間に再現したもの。この取り組みは、メタバースや生成AI(人工知能)などのデジタルツールを利用し、生徒にとって保健室を居心地の良い場所に変えること、相談のハードルを下げることを目的としている。
立命館守山中・高ではコロナ禍以降、内科とも外科とも違う不安を持った生徒が保健室に来室しやすくなったという。また、さまざまな理由から学校に行きづらいと感じる生徒に寄り添うためにも、従来の保健室に加え、サポートルームを増設するなどの対応を進める中、次の一手として新たな対策を考える必要があった。このような背景を受け、一般社団法人「インパクトラボ」(滋賀県草津市)などの協力のもと開発が進められた。
生徒は自分の分身となるアバターを通じ、同じような問題意識を抱える生徒との交流や匿名での相談などが可能となる。さらに、自宅などから場所を問わず登校が可能となることで、生徒同士のコミュニケーションの活性化などが期待できるという。実際に体験した中学2年の生徒からは「勉強できる空間や教員室がメタバース上にあると気軽に相談ができる」などの声が挙がっている。
今後の展望として、利用生徒のフィードバックを基にした運用改善や、生成AIを利用した受付の対応、教室・理科室・職員室などの保健室以外の空間の展開などが想定されている。将来的にはこれらの実践事例を研究会で発表、論文や書籍にまとめることによって社会への発信も検討しているという。
(小室、加藤)