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【連載】トップ・グローバル・ユニバーシティー「立命館から、アメリカ大統領を。」第4回

「立命館から、アメリカ大統領を。」2019年の大晦日、朝日新聞・神戸新聞・Twitterに掲載されたこの広告が人々の目を引いた。広告は文部科学省が国際化を徹底して進める大学を重点支援する「スーパーグローバル大学創世支援事業」に採択されている本学の突き抜けたグローバル化を宣伝するものであった。しかし、この広告について学内外で批判や説明を求める意見が続出し、学生が署名活動を展開する事態となった。

当該広告について、関係者や有識者に対して取材を行い、全4回に渡り特集する。

第4回となる今回は、当該広告を掲載した広報課と、広告の戦略に携わった総合心理学部のサトウタツヤ教授に話を聞いた。

広告の戦略に携わったサトウタツヤ教授

広報課によると当該広告の掲載意図は本学がこれまでグローバル人材を育成し、輩出してきた実績を社会にアピールすることだという。立命館の学生が、一見不可能なことであっても挑戦する姿勢を持ってほしいという意味も込められていることも示した。

「当該広告に20年後と書いた通り、まだ誰も到達できていない所に到達できる人材を育成していこうという思いがあったのと、2020年代の始まりや令和を迎えたことなど、新しいという思いを抱く人が多いのではないかと考えています。そのような中で夢を語るという広告を掲載しました」

当該広告について署名を集めるとともに、広報課と学友会に説明を求める文書を提出した大月隆生さん(取材時・産社4、現・社会学研究科修士1)はグローバル化=アメリカ大統領というアメリカナイズや、大統領役が中年男性というステレオタイプな表現内容に疑問を呈している。サトウ教授は「アメリカ大統領」という言葉を使用した意図について次のように説明している。

「例えば、日本国内のことであれば、すぐにでも実現可能です。しかし2040年のことはまだ誰にもわかりません。できないことを想像していこうという意図があります」

当該広告のメインコピーである「立命館から、アメリカ大統領を。」という文章は、東日本では「日本から、アメリカ大統領を。」という文章に変更されている。西日本と比べて本学の認知度が低い東日本、特に首都圏の人々に対し、認知度を向上させて本学のグローバル人材を育成・輩出できる取り組みを行っていることについて理解してもらう狙いもあるという。18歳人口が減少している中、本学は首都圏を重要なターゲットと捉えている。

東日本エリアでは左上のメインコピーが「日本から、アメリカ大統領を。」という文章に変更されている

広報課は当該広告について、広告代理店を交えて内容や掲載日について長期間にわたって検討を重ねてきた。批判の声が上がっているアメリカ大統領像が表現された内容については様々なモデルを試して広告表現として一番伝えやすいモデルを起用したという。

「批判の声が上がってはいるが、人によって様々な捉え方があります。当該広告で語っている人の性自認が女性であるかもしれないし、実際に性別的な女性かもしれません。世界が狭まっていき、国内外関係なく活躍する人材という点では国籍や人種、性別は問われないし、ましてや外見にとらわれることはない、そういう未来をつくっていきたいですね」

広告の専門家である産業社会学部の小泉秀昭教授は、新聞に広告を出すことについて「決して間違った選択肢ではない」とした。広報課は当該広告を新聞に掲載した理由について、新聞の視認性と、伝えたい内容をしっかりと読み込んでもらえるということを挙げた。また、広報課は当該広告をSNSやWEBニュースなどでも発信した。それらをあわせることで、新聞の購読者層以外の幅広い年齢層に届けることができたと認識している。様々な選択肢を検討したなかで、購読者層やデジタルの波及性という点、掲載のタイミングなどを考えて、朝日新聞と神戸新聞を選んだという。掲載費については個別の契約内容に関わる事項であるとして、回答は差し控えられた。

当該広告については多くの疑問や批判が集まっているが、広報課に直接寄せられたものは少ないという。朝日新聞社が実施した購読者へのアンケート調査では、当該広告について好意的な反応が多かった。さらに、当該広告は「神戸新聞広告賞広告主部門」で金賞を受賞した。

「当該広告が広告表現として成り立っていたことは理解してほしいと思います。ただし、伝えたかった思いが伝わりきらずにネガティブな反応が広まってしまったことは残念です。無論、新聞を読んで十分に内容を理解してくれた人からは好評価を得ているので、多様な意見を今後の広報活動に活かしていきたいと思います」

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