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【連載】トップ・グローバル・ユニバーシティー「立命館から、アメリカ大統領を。」第1回

「立命館から、アメリカ大統領を。」2019年の大晦日、朝日新聞・神戸新聞・Twitterに掲載されたこの広告が人々の目を引いた。広告は文部科学省が国際化を徹底して進める大学を重点支援する「スーパーグローバル大学創世支援事業」に採択されている本学の突き抜けたグローバル化を宣伝するものであった。しかし、この広告について学内外で批判や説明を求める意見が続出し、学生が署名活動を展開する事態となった。

当該広告について、関係者や有識者に対して取材を行い、全4回に渡り特集する。

第1回となる今回は、署名を集めるとともに、広報課と学友会に説明を求める文書を提出した大月隆生さん(取材時・産社4、現・社会学研究科修士1)に話を聞いた。

取材に応じる大月さん

大月さんが最初に感じたのは違和感だった。広告について友人と話すと皆が「あれはおかしい」と口を揃えたという。大月さんはこの違和感は多くの学生が抱いていることだと確信した。広告が2040年にアメリカ大統領を誕生させるという未来への宣言になっており、在学生に限らない幅広い意見を集約する必要性、学校法人という教育機関が掲載することへの疑問、在学生の声を学部生の代表である学友会が拾い切れていない点の3つが署名を集めるきっかけになった。

大月さんは広告について次のように語る。

「広報課はこの広告について、突き抜けたグローバル人材を育てることと、一見不可能なことへのチャレンジ精神を謳っていると言いました。しかし、この広告ではグローバル化がアメリカナイズとされていたり、アメリカ大統領役が中年男性であったり、ステレオタイプな価値観に染まっています。この表現にとても疑問を感じます。また、広告は未来に向けての宣言になっています。そのため、このステレオタイプを未来に向けても引き継ごうというようにも読み取れてしまいます」

また、問題点は内容面だけではない。大月さんは、朝日新聞は約9500万円、神戸新聞は約1000万円の広告費がかかるとしている。その一方で、2019年度の奨学金支出予算が前年度より約3億5000万円減額されていることを指摘。2020年度入学生は学費の実質的な値上げも予定されており、この広告に対する支出が適切なものであったのか疑問を呈している。広告費や財源を広報課に質問したが、具体的な金額についての回答はなかったという。

「広報課は予算の範囲内でこの広告を掲載したと言いました。この先18歳人口が減少していき、かつ大規模私大の定員抑制が実施されている中で志願者を増やそうと広告を掲載することは必要なことだとは思います。しかし、学校法人は営利企業ではなく教育機関です。いくら予算の範囲内とはいえ、1億円ものお金をあのような内容の広告に使うのは本当に正しい使い方だったのでしょうか」

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広告が未来への宣言となっており、また、学校法人という公的な機関であるという2点から、在学生に限らずに幅広く集めた署名は4月7日12時現在で1,308件に上る。

「よく学生運動と重ね合わせて見られることが多いですが、それとは違います。この活動は大学側に対話と説明を求めるものであって、大学側の体制批判をしようとするものではありません」

大月さんの署名ページ

この署名活動を行う中で、大月さんは学友会にも質問文を送った。学部生を代表することを謳っている学友会が、その機能を本当に果たしているのかという疑問を抱いたためである。学生の感覚と乖離した広告が出たということは、学部生の声を代弁するという学友会は形骸化しているのではないかと大月さんは指摘する。学友会の回答では、学友会組織の形骸化は否定されていた。しかし、活動の認知度不足については認められていたという。そこに矛盾を感じた。

「知られていないのに代表をしている。それはおごりだと思います。学生の感覚とあまりにもかけ離れた広告が出てしまったということは、大学側が学生からのプレッシャーを感じていない。ということは本来学生からのプレッシャーを代弁するはずの学友会が機能していないのではないかと思います」

一連の活動では1,308件の署名の他にも、個別に応援のメッセージが届くという。しかし、同時に見知らぬ人々から誹謗中傷の言葉をかけられることもある。

「寄せられた声を集約して代弁していますが、それ以前に私は大月隆生という個人なので、疲弊してしまっています。次に何か目に見える形で行動を起こして、そこで一区切りを付けようかと思っています。ただ、この広告に関する批判や問題点は学友会や学内メディアに回収してほしいと思います」

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