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海神DIGITAL「文通」

立命館大学新聞のコラム欄「海神(わだつみ)」 記者が日々の思いを綴ります。

朝、郵便受けを覗くと、鹿児島県に住む友人から手紙が届いていた。文明の発達により、誰とでも瞬時に連絡が取れる時代。わざわざ文通といったアナログな遊びに興じる人間は少ないだろう。しかし、手間がかかるからこそ、より相手とのつながりを感じられる。

思うように人と会うことができない今、人とのつながりは希薄になっているだろうか。家にこもってテレビやインターネットに浸っている時間や、世紀末のように閑散とした近所を歩くとき、私は寂しさと心細さを感じていた。しかし、文通をはじめてからは、少し考え方が変わった。

手紙を出す、という行為は単純そうに見えて、1人の力ではできない複雑さを持っている。便箋や切手を売る店員、手紙を書く私、判を押し配達する郵便局員、読んでくれる友人、と誰が欠けてもそのやり取りは成立しない。人から人へ、すべてがつながっている。手紙だけではない。今日買った野菜も、蛇口から溢れる水も、数え切れないほど多くの人の手を経て私たちに届いている。そして自分もその流れの一部であることを自覚するとき、私は、たとえ1人であっても、誰かがそばにいるような、安心した気持ちになる。

「いつも通り中身のない手紙になりました。お互い健康に気をつけていきましょうね」友人からの手紙はこう締め括られていた。「いきましょうね」は「生きましょうね」とも読める。どのような状況であっても、生きている限り、誰かとのつながりが途絶えることはない。(波多野)

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