古代ローマと日本の入浴文化のつながりに焦点を当てた、特別展「テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本」が22日、神戸市立博物館(神戸市中央区)で開幕した。古代ローマの「テルマエ(公共浴場)」と日本の「お風呂」の2つの浴場文化にまつわる作品や考古遺物、模型など約150点が、ナポリ国立考古学博物館をはじめとする国内外の博物館・美術館から集結。開幕に先立って21日、報道関係者向けの内覧会が行われ、関係者らを魅了した。
全4章で構成されるこの展示の前半では古代ローマ都市の暮らしやテルマエを紹介し、後半では日本の入浴文化を紹介。それぞれの文化を体感することのできる構成となっている。古代ローマの浴場設計師が現代日本の浴場にタイムスリップし、日本の入浴文化を学ぶ様子を描いたヤマザキマリさんによる漫画『テルマエ・ロマエ』の主人公ルシウスが同展のナビゲーターとして登場する。
第1章「古代ローマ都市の暮らし」は古代ローマ都市に住む人々の暮らしを紹介。古代ローマの娯楽に着目した美術品として、炭化したパンのレプリカや剣闘士の像が並ぶ。
第2章「古代ローマの浴場」では古代ローマの大衆娯楽に発達を遂げたテルマエについて、道具や建築技術などの視点から多様な側面を紹介。ガラス瓶、指輪といった小物に始まり、治癒神でもあったアポロの像《アポロ・ピュティウス坐像》、アポロと泉を保護するニンフたちのレリーフ《アポロとニンフの奉納浮彫》などが展示される。
第3章「テルマエと美術」では、床に使われていたモザイクや、壁面や円柱に飾られた大理石彫刻を展示。テルマエは大衆が美術品を間近に見ることができる場であり、豊富な装飾が施されていたことがうかがえる。
第4章「日本の入浴文化」では、古代から現代にかけての日本の入浴文化を紹介。同展は昨年から山梨、大分、東京で開かれてきた巡回展。それぞれの会場では、ご当地の温泉について紹介されており、最後の開催地となる今回の神戸市立博物館では有馬温泉(神戸市)が取り上げられる。有馬温泉にゆかりのある豊臣秀吉を描いた《豊臣秀吉像》や、温泉寺(神戸市)が建てられた経緯を表す《温泉寺縁起》などが展示されている。同館館長の油井洋明さんは「この展示を機に神戸の浴場文化に関心を持っていただけるとうれしい」と語った。
油井さんは「『テルマエ・ロマエ』の主人公ルシウスを案内人とし、さまざまな世代の人に楽しんでもらえる展覧会。思う存分楽しんでほしい」と話した。
同展の会期は8月25日まで。開館時間は午前9時半~午後5時半(金曜日と土曜日は午後8時)で、入場は閉館の30分前まで。休館日は毎週月曜日(7月15日、8月12日は開館。7月16日、8月13日は閉館)。観覧料は大学生の場合900円。詳細は公式サイトを参照。
(長尾、中村)