3月28日、本学アート・リサーチセンターは酒呑童子絵巻の修復作業を完了した。酒呑童子絵巻とは、源頼光が「酒呑童子」という鬼を退治する話が描かれた絵巻で、本作品以外にも多く存在している。そのなかで本学のものは、特に技術やニーズが最も高い時(1650年頃)に京都で作成されたもので、他のものと比べても豪華で高品質なのだという。そのため美術品としての価値が高く、最初に買ったのは貴族や武士など身分の高い人だったとされている。明治維新後、W.ビゲローというアメリカのコレクターがボストンに持ち出し、ボストン美術館に収められる前にヨーロッパに渡り、ナチスの手に落ちることなく、プラハ(チェコ)に移り、京都に帰ってきた。
修復に際して「一人の職人さんだけで作業をする工程も多く、莫大な時間やお金がかかる」と話すのは修復に携わった本学文学部の赤間亮教授。絵巻を何度も巻いたり広げたりして紙に折れ目が入ってしまったため、一旦紙を割き、更に強い紙で補強するなどの作業がされた。修復作業と同時に講談社と提携したクラウドファンディング「ブルーバックス・アウトリーチ(BBO)」も行われた。資金集めとともに絵巻の一般認知も目的とされた今回のクラウドファンディングは、文化財が好きな人々の協力のもと目標額まで達成できたそうだ。現在はその協力者に向けて、酒呑童子絵巻を中心とした展覧会が検討されている。アート・リサーチセンターは、修復前のものを所蔵し始めた当初からデジタルアーカイブとして一般公開をしていた。今回修復が完成した状態の画像も今後デジタル上で公開される予定となっており、コロナ禍でもさほど影響を受けずに情報公開ができているという。
赤間教授は学生に対して「酒呑童子絵巻を本学の代表的な宝物の一つとして誇りに思ってほしい」とその思いを語った。(佐野・中村)
源頼光とその家臣が「酒呑童子」とよばれる鬼を退治する話が描かれた絵巻。全5巻。