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【立命館教員インタビュー特集】第2回:細谷亨先生

細谷亨(ほそやとおる)先生
#経済学部 #経済史 #国際平和ミュージアム副館長

教員インタビュー第2回は経済学部の細谷亨先生。細谷先生は本学経済学部で日本経済史などを教えるほか、国際平和ミュージアムの副館長も務めている。本記事では細谷先生の研究テーマとその内容、国際平和ミュージアムでの活動などについて伺う。

―現在の研究テーマ・分野についてお聞かせください。
大きくは、近現代日本の「移動する人々」が研究テーマです。グローバルな広がりを持つ「移動する人々」の視点から、近現代の日本社会がどのように成り立ってきたのか分析しています。そのなかでも焦点をあてているのが、満蒙(まんもう)開拓です。

記者のメモ

★満蒙開拓とは
日本の傀儡(かいらい)国家「満州国(満洲国。現在の中国東北部)」に送り出された農業移民。昭和恐慌により疲弊した日本内地の農村の経済立て直しや食糧増産などを目的としたほか、満州国の支配・防衛という軍事的背景もあった。満州国の建国以降、日本各地から約27万人が農業移民として渡ったが、日本の敗戦後、伝染病の流行やソ連軍の侵攻、集団自決などにより、約8万人が亡くなったとされる。
★満州国(満洲国)とは
満州事変後の1932年、日本が中国東北部と内モンゴルを主な領域として設立した傀儡国家。①漢・満州・朝鮮・蒙古(モンゴル)・日本の多民族が共生するという「五族協和」②武力で制覇する「覇道」に対し、徳で治める「王道」で国をつくるという「王道楽土」の二つを建国理念として、多くの日本人が満州国に渡ったが、現地住民を立ち退かせ、入植することが多かったという。(『国史大辞典』参照)

―現在のテーマにされたきっかけは何でしょうか。
満蒙開拓をテーマに設定し始めたのは、大学院修士課程のときです。大学のゼミでは昭和戦前期に大きな影響をもったファシズムや農本主義という思想を題材に卒論に取り組みましたが、出身の山形県は全国的にも多くの開拓移民を送出したことから、大学院から満蒙開拓にテーマを絞って研究しようと思いました。

―特に満蒙開拓のどのような点に着目されていますか。
満蒙開拓は昭和戦前期に日本国家が主導した政策、つまり国策です。地域ぐるみでの移住も進められました。結果として移住した側にも現地住民側にも多くの犠牲者を出したわけですが、このような悲劇をもたらした移民政策とは何だったのか、国家の政策に人々はどのように参加し、その一端を担ったのか、そしてそこから私たちは何を学べるのかということに着目しています。

学生時代に各自治体を回り作成したというノート

―では、現在の私たちが戦時の満蒙開拓を学ぶ意義をお聞かせください。
一つは、満蒙開拓は国際社会の平和構築、とりわけ東アジアでの平和を築くうえで必要な相互理解を深める手掛かりを与えてくれるテーマだと思います。満蒙開拓は現地住民たちの土地を収奪することで行われました。私たちが加害や負の歴史に真摯に向き合うことは、日中関係をはじめ東アジアの平和構築につながると思います。
もう一つは満蒙開拓が、自分と異なる特徴や背景をもつ人たちとどのように関わっていくのかを模索するための手掛かりになると考えています。入植地で開拓移民たちは国籍や民族などが異なる人々と関わることになります。研究を進めるなかで、開拓移民の中には、単に侵略する側・される側としてだけでなく、一個人として現地住民と友好な関係を築いた事例もあったことがわかりました。日本人が自らと異なる文化的な背景や特徴をもつ人々とどのように関わったのか、国策の是非だけでなく個人の経験として満蒙開拓を考えることは、外国人住民など歴史的・文化的な背景を異にする人たちと共生していくうえでも役立つはずです。

各団の詳細が記された開拓団史と当時の雑誌

―研究をされてきたなかで、最も印象に残っていることは何でしょうか。
立命館の土曜講座で満州移民に関する講義をした際の出来事です。終わったあとに、開拓移民の遺族の方から「とてもよく調べてくださりうれしかった」と声をかけられ、ご自宅にあった史料を寄贈していただきました。「研究」は一般の方からしてみるととっつきにくいものだし、体験者や遺族の方がどう受け止めるのかは常に考えなければならないのですが、このとき、自分の研究が社会や遺族の方にとっても役立っていると実感しました。

細谷先生が保有する資料には遺族らから寄贈されたものも

―先生は経済学部に所属しておられますが、本学経済学部の魅力は何だとお考えですか。
経済学部というと、ミクロ・マクロ経済や金融などをイメージしやすいと思いますが、それだけでなく、思想や歴史(経済史)なども学ぶことができます。また、ゼミなどの小集団教育にも力を入れているので、4年間で充実した学生生活を送ることができるはずです。

―昨年度4月から国際平和ミュージアムの副館長も務められていますが、そこではどのようなことをされていますか。
今は9月のリニューアルオープンに向けてひたすら走り続けている状況です。来館される皆さんが、戦争と平和、差別・支配・暴力などの問題を「自分ごと」としてしっかり考えられるような魅力的な展示を作りたいと思っています。

―最後に学生へのメッセージをお願いします。
4年間はあっという間なので、後悔しないよういろいろなことに挑戦してほしいです。失敗も必ず糧になって返ってきます。大学生活ではゼミに本気で取り組んでほしいです。自分で考えて学び、テーマをみつけて研究するというのは大学の醍醐味です。そこで培った力は、社会に出てからも大いに生かせると思います。

(聞き手・下田)

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