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海神DIGITAL「流れ」

立館館大学新聞のコラム欄「海神(わだつみ)」。記者が日々の思いを語ります。

朝、肌寒さを感じながら窓を見ると、うろこ雲が浮かんでいるのが目に入る。ついこの間まで積乱雲が鎮座していたのに。コロナ禍で外に出る機会が少なくなると、季節の流れが早いように感じる。気付かぬうちにもう秋だ。今はマンションのエレベーターの中での世間話もない。静かにしなくてはいけないという緊張感が空間を支配し、息苦しさを感じる。「すっかり日が落ちるのが早くなりましたね」なんて、ただ共感を示し、気まずい沈黙を埋めるだけだったお隣さんとの会話が懐かしい。

夏休みも不要不急の外出は控え、秋学期はWeb授業から始まった。スマホを1回タップすれば、新しい情報が流れ込み「ほら、置いて行っちゃうよ。早く、早く」と情報に急かされる。変化するコロナの感染状況に振り回され、「もうみんなは先に行ってしまったかもしれない」と架空の「みんな」を設定し、目に見えない流れに乗り遅れないよう自分を追い込む。

目に見える季節の流れにハッとして、見えない流れに遅れまいと必死な状況が少し滑稽だ。1人で考えることが増え、なんてことない会話が減り、他者と感情を共有することが少なくなったからだろうか。

こんな状況だからこそ完璧や生産性にとらわれずにいたい。自分の迷いや、一休みを許せるように。また他人のまごつきに寄り添えるように。見えない流れに必死になるのではなく、自分の流れを持ち、自然の流れを感じたい。(川村)

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