9月23日、立命館大学国際平和ミュージアムがリニューアルし、2021年4月に休館して以来、3年ぶりに開館した。ここでは、リニューアルしたミュージアム館内の様子を伝える。
リニューアルしたミュージアムの外観（提供：立命館大学国際平和ミュージアム）
地階（地下）：常設展示
地階の常設展示には年表展示やテーマ展示、来館者同士で感想を共有できる「問いかけひろば」が設置されている。展示全体のテーマは「PEACE×PIECE（ピースバイピース）」。展示されているさまざまな資料、写真や個人の言葉などを、平和を考えるためのヒントと捉えて「平和のピース（かけら）」と名付けている。そして来館者が展示室に散りばめられた平和のピースからそれぞれの関連性・つながりを発見し、平和をつくり出すヒントを考えられるよう、このテーマが発案された。
年表展示は全長約70mに及び、リニューアルを通して増幅されたその内容には1840年のアヘン戦争から2021年のミャンマーでのクーデターまで、約180年間の国内外の歴史が記されている。年表では各時代の史実のほか、当時の人々が残した日記や声明など、個人の声も取り上げられている。国際平和ミュージアムオフィスの田鍬美紀さんは、今回のリニューアルではこうした個人の体験談を豊富に取り入れたとし「来館者が世界の出来事を自分事として考えられるようにした。また当時埋もれてしまった声を掘り起こす意味でも、周縁に生きる人々に焦点を当てることを大切にした」と語る。
年表展示は全長約70mに及ぶ（提供：立命館大学国際平和ミュージアム）また、テーマ展示は「帝国主義（1840〜1930年）」「十五年戦争（1931〜1945年）」「戦後の世界（1945〜1989年）」「現代の課題（1990年〜）」の4部から成る。各テーマ展示には当時の写真や証言などが掲載されており、年表展示と各テーマ展示を行き来することで、各テーマについてより深く理解することができるという。また、来館者が自身の意見・思いをマグネットで表現できる来館者参加型の展示「Coloring World」や来館者が持ち帰れるカードなども設置されている。
テーマ展示・年表展示を進むと「問いかけひろば」が設けられており、来館者は設置されているタブレットに、展示を見た感想や思い（平和のピース）を入力することで、それらを共有できる。田鍬さんは「来館者同士の『対話』を大切にした。また、展示内容は暗くて重いものも多い。自分だけで受け止めきれないものを外に出してもらえるように、このような場を設けた」とその意図を語る。
「問いかけひろば」。中央の円に来場者の感想が映し出される（提供：立命館大学国際平和ミュージアム）
1階：総合受付・無言館京都館「いのちの画室（アトリエ）」など
1階には総合受付や中野記念ホール、一般から企画を募り展示を催す企画展示室のほか、戦没画学生慰霊美術館「無言館」（長野県上田市）の京都館が設置されている。2005年の第1期リニューアルを機に創設されたという無言館京都館では、主に関西の戦没画学生の作品を見ることができる。
また、今回のリニューアルでは救護室・授乳室の新設など、誰もが安心して来館できるユニバーサルデザイン化が進められた。
エントランスホールの壁面には「火の鳥」が描かれているほか、わだつみ像が設置されている（提供：立命館大学国際平和ミュージアム）
2階：ピースコモンズ・国際平和メディア資料室
2階にはピースコモンズや国際平和メディア資料室が設けられている。国際平和メディア資料室には地階の常設展示にまつわる文献資料が豊富に所蔵されているほか、併設されるピースコモンズでは、メディア資料室の資料を用いた自主学習やグループ学習ができるという。国際平和ミュージアムオフィスの田口史織さんは「ぜひ気軽に来てもらいたい。学生の皆さんには、論文やレポート課題の資料集めの場としてだけでなく、展示の感想を話す場としても気軽に利用してもらえれば」と期待を寄せた。
ピースコモンズではグループワークなどができる（提供：立命館大学国際平和ミュージアム）
最後に田口さんは、学生に対して「ミュージアムが休館している間に、世界ではロシアのウクライナ侵攻などいろいろな出来事が起きた。そうした世界の出来事と身近な出来事、過去の出来事の間にあるつながりを知るだけでなく、自分に出来ることをミュージアムを通して考えてほしい」と語った。
国際平和メディア資料室には、平和関連の図書・雑誌資料・AV資料が所蔵されている（提供：立命館大学国際平和ミュージアム）
（下田）
