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「別班」調査報道の経験語る 『VIVANT』で注目、石井暁さんが講演会

陸上自衛隊の秘密組織「別班」の調査報道をテーマにした講演会が20日、本学衣笠キャンパス以学館にて開かれた。産業社会学部で客員教授を務めている共同通信社編集委員・石井暁(ぎょう)さんから別班の調査報道に関する経験が語られ、参加した学生約100人が耳を傾けた。

登壇した石井さんの話に聞き入る参加者=20日、京都市北区

講演会は産業社会学部メディア社会専攻が主催。共同通信社の記者として、防衛省・自衛隊の取材を約30年担当してきた石井さんが「日曜劇場『VIVANT(ヴィヴァン)』で話題になった陸上自衛隊の秘密組織『別班』の調査報道」と題して講演を行った。石井さんは2008年4月、自衛隊幹部から陸上自衛隊の秘密組織・別班の情報を得て取材を始め、2013年11月に別班の海外での情報収集活動をスクープ。その後、別班の実態を『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社)にまとめた。本書を参考文献として制作されたTBS系日曜劇場枠のテレビドラマ『VIVANT』では、海外で活動する別班の姿が描かれ、注目が集まっていた。

自らの取材経験を参加者に語りかける石井さん=20日、京都市北区

講演会で石井さんは、自身の取材経験を踏まえて調査報道のあり方や別班の実像について語った。別班とは、陸上自衛隊に存在するとされる秘密部隊。ロシア・中国・韓国などに拠点を置き、首相や防衛相の指揮・監督を受けず独断で情報収集活動をしてきた。石井さんは、別班の存在が文民統制を逸脱していること、別班員養成課程で洗脳教育が行われていることなどが問題だと指摘。別班など安全保障分野の報道に関して、特定秘密保護法の取材・報道への影響に懸念を示した。石井さんは「別班はほとんど知られていなかったが『VIVANT』を通して関心を持っていただけたのはうれしい」と話し「別班の問題点に目を向ける人が増えると良いと思う」と期待している。

また、石井さんは「戦争には協力せず、軍事組織には厳しい目を向けるなど、権力を監視するのがジャーナリズムの最大の使命だ」と自らの考えを示した。調査報道とは、当局の発表によらず、記者が事実を明らかにして権力に迫るものだという。今後、調査報道の最大の担い手である新聞が衰退するとともに、調査報道自体が衰退していくのではないかと危機感を抱いているといい「調査報道は健全な民主主義国家が存在するために絶対必要。今後どうあるべきか、一緒に考えていただきたい」と訴えた。

(小林)

 

◎特定秘密保護法

正式名称は「特定秘密の保護に関する法律」。防衛、外交、スパイ防止、テロ活動防止など安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものを「特定秘密」として指定し、漏えいした場合の罰則などを定めたもの。別班のスクープと同時期である2013年11月から国会で審議され同年12月に成立、2014年に施行された。安全保障に関する取材・報道が特定秘密保護法により処罰の対象となる可能性があり、一部で懸念の声が上がっている。

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