10月8日「袴田事件」と呼ばれる1966年に起こった静岡県一家4人殺害事件で、死刑が確定していた中、58年間犯人とされていた袴田巌さんの無罪が確定した。今「冤罪」に対する意識が世間で変容しつつある。冤罪防止を目的に活動する「イノセンス・プロジェクト・ジャパン(IPJ)」に参加する本学法学部・森久智江教授(犯罪学・刑事訴訟法)と学生ボランティアに話を聞いた。
IPJについて
冤罪とは、罪を犯していないにもかかわらず、犯罪者として扱われてしまうことだ。IPJは、冤罪の被害者の支援・救済、冤罪事件の再検証を通じて公正・公平な司法の実現を目指している。
理念は「真実をボランティアすることによって明らかにすること」。IPJの特長は「実務家と研究者が連携しており、なおかつ全国の学生も関与していること」と森久教授は語る。
アメリカで1990年代に始まり、全世界に広がりつつある「イノセンス・プロジェクト」。
この活動を日本に取り入れようと、甲南大法学部・笹倉香奈教授(刑事訴訟法)が、法律と心理学の連携などを積極的に行っていた本学と協力した。供述を情報工学によって分析するなど、司法での科学技術の面で協力していた政策科学部・稲葉光行教授(情報学)を代表として、司法実務家、研究者などの有志により2016年4月1日に設立された。
学生参加の影響力
IPJには学生ボランティアも参加している。森久教授は、学生ボランティアが活動に参加する意義について「専門家よりも一般の人々に近い視点で冤罪の問題を社会で共有すべきだと訴えかけられること」だと話す。
立命館IPJボランティア代表の加藤宏輝さん(法2)は「一般の人々との架け橋になり、より多くの人に(冤罪を)身近なものと知ってもらうことができる」と語る。同ボランティアでは本学付属校などへの出張講義や一般向けシンポジウムを開催している。
冤罪への認識の変容
近年、科学技術の大きな発展に伴い、いくつかの事件で犯人とされていた人物の無罪が明らかとなった。しかし、森久教授によれば、「冤罪は古い事件ばかりで、科学技術の発展した今はないのではないかという認識がある」という。
日々大小さまざまな冤罪が起こっており、誰が冤罪の犠牲になってもおかしくない。森久教授は冤罪を防止するため「捜査や報道がやりすぎなのではないか、適切に行われているのか、日頃から観察することが大事」だという。
今後の展望
■今後の展望
「袴田事件」の無罪確定などを踏まえ、国会でも再審請求制度や構造などの見直しを扱うべきとの声も上がっている。
森久教授は、最終的に目指していくのは「刑事裁判の構造、制度的な問題の解決」と語る。
(長尾)