高額報酬をうたって犯罪実行役募集を行う、いわゆる「闇バイト」が深刻な社会問題となっている。闇バイトの実態とその対策について、京都府警察本部生活安全企画課の寺村研二警部に話を聞いた。
「簡単な作業をするだけで、高額の収入を即日手に入れることができる」――。そういった甘言に誘われアルバイトに応募すると、指示役に脅され犯罪に加担。報酬は得られず、犯罪の実行役として逮捕される。若者が捨て駒として利用される、闇バイトの事例が相次いでいる。
募集は、X(旧ツイッター)などの若者が多く利用するSNS(交流サイト)で行われる場合が大半だという。「ホワイト案件」「高収入」などといった言葉で、若者を応募に誘い込む。
募集要項を見る際の注意点として、「報酬が高すぎるものにはやはり注意が必要」と寺村警部は話す。「現在、アルバイトの時給の平均は1400円程度。時間で1万円など、報酬が高過ぎるものにはやはり注意が必要。お金がないと飛びつきたくなる気持ちは分かるが、よく考えてほしい」と注意を呼び掛けた。
また、連絡手段にも注意が必要であるという。指示役と実行役のやり取りには、「シグナル」や「テレグラム」といった匿名性や秘匿性が高い通信アプリが利用されていることが多い。「そういった方法で連絡するよう誘導された場合は注意しなければならない」と寺村警部。
その後、指示役は身分証明書の提出を求め、その上で犯罪に巻き込むことが多い。実行役は、「家を知っている」などと脅され、家族など親しい人に危害が加えられることを恐れ命令に従うという。
京都府では、闇バイトによる特殊詐欺の事例が相次いでいる。実行役の主な役割は、「受け子」や「出し子」。受け子は被害者の家などに行き現金やキャッシュカードを受け取ること、出し子はキャッシュカードなどを用いて、ATM(現金自動預け払い機)から現金を引き出すことが役目となる。「若者は受け子を担うことが一番多い。なぜなら被害者と接触するため、一番捕まりやすいから」と寺村警部は話す。
若者が実行役として使い捨てにされている実態がうかがえる。
寺村警部は、「犯罪に巻き込まれてしまったら、必ずすぐに警察に連絡をしてほしい。個人情報を取られ脅されていても、警察が必ず保護をするからそこで諦めないでほしい」と強くメッセージを送る。電話をかけた地域を管轄する警察本部などの相談窓口につながる、警察相談相談専用電話「#9110」番の利用も推奨している。
最後に「目の前のお金欲しさに関わってしてしまうと、人生が台無しになってしまう。決して安易に手を出さないでほしい。ささいなことでも警察に相談していただけたら」と適切な対応で身を守ることを求めた。
(吉江)