大阪府茨木市北部の植生を大阪いばらきキャンパス(OIC)で再現する「育てる里山プロジェクト」が、前身プロジェクトの始動から今年で10年目を迎える。現在のマツタケ栽培やこれからのプロジェクトの在り方について、キャンパス開設に先立ち、同プロジェクトに携わってきた本学経営学部の田中力教授とプロジェクトメンバーに話を聞いた。
「育てる里山プロジェクト」は失われつつある茨木市北部の里山から苗木を採取しOICに植栽・再生・利用する活動。キャンパス開設に先立つ2012年から「里山サポートネット茨木」との連携のもと、現在まで活動が続けられてきた。新キャンパス開設の構想が持ち上がった当時、田中教授は東日本大震災から「人と自然のかかわり」を意識したという。具体的なイメージは持たず、持ち前の行動力で同市の里山センターを訪れ、活動メンバーと出会ったことを振り返る。当初の植生の様子については、移植した植物の半数以上が枯れてしまったこともあったという。しかし、活動について「絶対的なリーダーはおらず、素人なりにみな勉強熱心。苦労のたびに意見を出し合えた」と話す。
「育てる里山プロジェクト」において整備が進むフィールドの南エントランス付近では、現在マツ科の赤松が集中的に植栽され、その一帯は赤松山と呼ばれている。田中教授は現在、この場所でマツタケの生育に挑戦している。2013年に受講した本学が開催する土曜講座で赤松とマツタケ、加えて炭との関係に興味を持ったことがきっかけだったと振り返る。また、茨木市の人々との交流の中で、赤松が同市北部の植生の一部であったこと、昭和30年ごろまでマツタケが採れていたことを知ったという。茨木市里山センターでは炭を使用して活動する団体の存在していたこともあり、「これらの話を結びつけ赤松エリアを作り、炭を大量に投入すればマツタケの発生が期待できるのではないか」と考えついたことを話す。
最初は笑い話だったとしながらも「シロと呼ばれる赤松の根とマツタケの菌糸が共生してできる塊に似たものが確認できた。手ごたえは感じている」と生育の実現について意欲的に語る。同プロジェクトの顧問で森林生態学に詳しい天保好博さんは「赤松は光合成によって養分を、マツタケの細い菌糸が土壌の栄養を、互いに与えあう共生関係にある」と話す。しかし枯れた葉がたまり肥えた現在の松山エリアでは発生は難しいという。「土を肥えさせないためのマンパワーがまだ足りない」とマツタケの発生に至るまでの難しさを語る。田中教授は「なかなか手入れが行き届かないが、開設から7年経ち、赤松の木もすくすくと育っている。根元にも兆しが見られるので、10~15年目くらいには」と期待をよせる。
これまでの10年を振り返り、田中教授は「達成感を日々感じながら、次の10年を考えている。里山の利用に注目し、持続可能なプロジェクトを目指す。プロジェクトのメンバーや学生、教職員だけでなく地域住民の方々が参加しやすいよう活動していきたい」と話す。またこれからの里山と学生のかかわりについて「学生が里山を使ってどんなことをしたいのかを知りたい。リフレッシュやデート、ハイキングなど自由に使ってほしい。維持管理を通して見えてくるものもあるので、ぜひ関わってほしい。」と語った。(奥野)