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子ども・若者ケアラーの声を発信 YCARPプロジェクト

本学人間科学研究所内の「子ども・若者ケアラーの声を届けようプロジェクト(YCARP)」は、子ども・若者ケアラーについて、ケアラー本人の立場から社会発信や支援展開を行っている。本プロジェクトの発起人メンバーである、本学大学院社会学研究科の河西優さんと関西大社会安全学部の平井登威さんに、プロジェクト内容や子ども・若者ケアラーを取り巻く社会の状況について話を聞いた。

左から平井さんと河西さん

本プロジェクトは、河西さんと河西さんの指導教員である本学産業社会学部の斎藤真緒教授が中心となってメンバーを集め、2021年に発足。発足のきっかけは、ケアラーに対する世間のイメージと実態の乖離だという。2020年に埼玉県で施行された「埼玉県ケアラー支援条例」を契機に、政府や各地方自治体でヤングケアラーへの問題意識が高まり、その様子を取り上げるメディアが急増した。世間で取り上げられるヤングケアラーに関して、河西さんは「メディアや政府は、ヤングケアラーを『悲惨で可哀想な人たち』と取り上げがち。でも、取り上げられるケアラーの様子とは裏腹に、実態は必ずしもみんながつらく苦しいわけではない。ケアラー本人の声が入っていないまま議論が進み、世間に周知されていることを問題に感じた」と発足の経緯を語る。

現在は「当事者同士の対話」、「当事者とサポーターとの対話」、そして「自分との対話」という3つの対話をコンセプトに掲げ、定期的なミーティングやSNSでの情報発信を行っている。ミーティングには、元ケアラーや支援団体の代表者などさまざまな話題提供者を招き、ケアラー同士やサポーター同士、ケアラーとサポーター間で議論することで、ケアラーへの理解を深めているという。コンセプトと活動について、平井さんは「3つの対話の中で、個人的に最も重要だと思うのが『自分との対話』。ケアラー本人は家事や家族の世話で忙しく、自分と向き合う時間がないため、ミーティングがその時間になっていたらうれしい」と述べた。

YCARP活動の様子

現在、支援団体や各地方自治体は相談窓口の設置を中心に、ケアラー支援を実施しているという。そこで平井さんは「YCARPでは、ケアラーを対象にしたキャンプやひとり暮らし体験など、ケアラーの余暇支援を中心に行っていきたい」と今後の展望を語る。また、河西さんは当事者不在の議論や決定が多いことに触れ「現ケアラーや元ケアラーの声を社会に届けて、ケアラーにとって適切な制度や支援が整っている環境の構築につなげたい」と述べた。

最後に河西さんたちは「子育てや看病など、ケアはとても身近な存在。誰でもケアをしたりされたりする可能性がある。ヤングケアラーは特別な問題を抱えた一部の人たちだと捉えられがちだが、ケアが身近なことだと認識してほしい」と呼びかけた。(下田)

ヤングケアラーとは…
法令上の定義はないが、一般的に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どもを指す(厚生労働省HPより)。

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