立命館大学新聞のコラム欄「海神(わだつみ)」。記者が日々の思いを語ります。
8月のあの日って何曜日だっけ、と壁にかかっているカレンダーに反射的に目を向ける。カレンダーが5月のまま止まっていた。2枚分のカレンダーを破りながら、もう上半期が終わったのかと思考をぼうっと遠くに飛ばす。あと少しすればこの「7」が書かれた1枚も破らなければならない。1カ月が過ぎるのが早いのは言わずもがな、最近は1週間すらあっという間だ。ちょっと目を離している隙に、時計の針が勝手に何秒も進んでいるのではないかと感じてしまう。なにか大切なことを見落としてはいないかと不安になる。
「ジャネーの法則」という法則がある。「生涯のある時期における時間の心理的な長さは年齢に反比例する」というもの。つまり「年をとるにつれて時間がたつのが早く感じる」。こう書くと、きっと誰もが一度は感じたことがある現象なのではないだろうか。
普段はあまりないのだが、これを知ってしまったときは己の好奇心を少しだけ恨めしく感じた。魔法のように感じていたことが、私が生まれるよりもずっと前に論理や数式で証明されていたことを思うと少し悲しい。楽しい夢から目覚めてしまった時のような、なんだか悲しい気持ちになるのだ。
いろいろなことを知ろうとすることで、きっと新たな出会いがあるし、見えている世界が広がって鮮明になる。でもあらゆることが見えすぎるのはなんだか興ざめしてしまう。少しくらい見えないものがあるほうが、実は良いのかもしれない。(坂口)