八坂神社(京都市東山区)が主催する祇園祭の神事「神幸祭(しんこうさい)」が17日の夕方から夜にかけ、京都市内の中心部で営まれた。3基の神輿(みこし)が八坂神社の氏子地域を周る神輿渡御(とぎょ)では、法被姿の担ぎ手らが「ホイット、ホイット」と掛け声を響かせた。
神幸祭は祇園祭の行事で、神輿が祇園をはじめとする氏子地域を周り四条寺町の御旅所(おたびしょ)へと渡御する神事。例年神幸祭と同じ日に行われる山鉾巡行は、神輿の渡御に先立って都大路の清祓(きよはらい)をしたものと考えられている。
神幸祭で御旅所に渡御する3基の神輿には八坂神社の御神霊がうつされている。3基の神輿はそれぞれ「中御座」「東御座」「西御座」と呼ばれ、それぞれ「素戔嗚命(すさのおのみこと)」「櫛稲田姫命(くしいなだひめのみこと)」「八柱御子神(やはしらのみこがみ)」が遷るとされている。
祇園祭での神輿渡御は、新型コロナウイルスの影響で2020年と21年は中止となっていた。昨年は3年ぶりの再開となったが、神輿が運ばれるルートは八坂神社と御旅所の間の最短距離でのみ行われた。今年の神輿渡御は4年ぶりに、神輿が別々の経路で氏子地域を周る従来の形での実施となった。
17日の18時頃、神輿は神宝奉持列とともに出発した。「綾戸國中神社(あやとくなかじんじゃ)」(京都市南区)の久世駒形稚児(くせこまがたちご)が、4年ぶりに馬で神輿を先導。3基の神輿は八坂神社西門の石段下に集結し、その後出発式が行われた。出発式で同社宮司の野村明義さんは「八坂神社の祇園祭は疫病を鎮める祭りではあるが、大神様の力を頂き、世の中を元気にし笑顔にするのも祭りの力だ」とし、コロナ禍に触れつつ「祇園祭で疫病に負けない平和な世の中を取り戻そうではないか」と担ぎ手らに語った。
その後3基の神輿の担い手たちは、神輿を高々と担ぎ上げる「差し上げ」や神輿を時計回りに回転させる「差し回し」を揃って行った。観客による大きな拍手も聞こえ、観客の集まった沿道は大いに賑わった。その後、3基の神輿は「ホイット、ホイット」という掛け声で担がれ、河原町通や大和大路通などをそれぞれの経路で通って、御旅所まで運ばれた。
祇園祭の観光のために千葉県からきた女性は「活気があるなと思った。今回初めて祇園祭を見たが、ものすごく満喫している。これからお神輿を追いかけに行く」と笑顔で話した。
3基の神輿は24日まで御旅所に鎮座。後祭の山鉾巡行の後、還幸祭で八坂神社へ渡御する。
(小林)