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【連載】トップ・グローバル・ユニバーシティー「立命館から、アメリカ大統領を。」第2回

「立命館から、アメリカ大統領を。」2019年の大晦日、朝日新聞・神戸新聞・Twitterに掲載されたこの広告が人々の目を引いた。広告は文部科学省が国際化を徹底して進める大学を重点支援する「スーパーグローバル大学創世支援事業」に採択されている本学の突き抜けたグローバル化を宣伝するものであった。しかし、この広告について学内外で批判や説明を求める意見が続出し、学生が署名活動を展開する事態となった。

当該広告について、関係者や有識者に対して取材を行い、全4回に渡り特集する。

第2回となる今回は、広告戦略などについて研究し、広告の専門家である産業社会学部の小泉秀昭教授に話を聞いた。

広告の専門家である小泉秀昭教授

小泉教授は新聞という媒体に広告を出すことについては「決して間違った選択肢ではない」とした。一般的に新聞は信頼性が高いメディアであり、当該広告が掲載された朝日新聞は比較的高学歴の人々が購読していることを指摘。認知度を増やすという点では新聞はテレビに劣るが、内容を十分に理解させるという点においては効果が高いという。また、新聞の購読者層は比較的年齢が高い。そのため、当該広告が受験生に向けた広告であれば非効率的であり、受験生の両親や祖父母に向けたものであれば、効率的であると話す。

朝日新聞社が公開している情報によると、朝日新聞朝刊の発行部数は5,579,398部、当該広告のサイズである全30段カラー広告の定価は94,870,000円となっている。これらのデータを基に小泉教授は、当該広告に対する購読者の接触率が74.2%と推測し、購読者1人あたりにかかる単価は約23円とした。

大学側に説明を求める署名を提出した大月隆生さん(取材時・産社4、現・社会学研究科修士1)は当該広告に約1億円もの予算が使われたとみられることに疑問を呈した。しかし、小泉教授によると、歴史的流れからテレビと比べた場合、新聞は広告費の価格の差が少ないが、当該広告には相当な値引きが適用された可能性を指摘した。

「一般的には(当該広告が掲載された時期である)年末年始は企業が休んでいるので広告が入りません。企業によってはあえてこの安い時期にしか広告を掲載しないところもあります。昨今の新聞業界は非常に厳しく、かつこの時期なので広告掲載に約1億円もかかったとは思いません」

小泉教授は当該広告の明確な目標が判明しない限り、当該広告について評価を下すことはできないという。

「当該広告が広告にもある通り「突き抜けたグローバル教育で人材を輩出する大学」ということを訴えたい内容であれば、ある程度目標を達成することができるかもしれないです。但し、その表現手段として、「アメリカ大統領」を用いたことが適切であったかは疑問が残ります。学園ビジョンR2020にある「私たちは、私たち自身の、組織の、地域や国の、制度の、さまざまな“ Border”を超え、その力を発揮し、未来に貢献するスピリットあふれる学園になることをめざします。」という内容とは必ずしも十分に合致してなかったとも感じました。広告の専門家としては、当該広告が何を訴えたいのか、そしてそれについてどのような表現方法をとるのかということに対して他の人たちに確認を取れていなかったため、批判が高まってしまったのではないかと思います」

また、当該広告は、批判が高まることで注目されることとなったが、そのような「炎上商法」について小泉教授は以下のように述べる。

「基本的には炎上商法は効果がありません。知名度が低い企業が短期的に知名度を向上させることには一定の効果がありますが、あくまで短期的な効果です。一度炎上してブランドイメージが下がってしまうと、回復するには時間がかかるので、長期的に見ればほとんど効果がありません。立命館のようなすでに一定の知名度があるところが炎上商法を使う意味はないですし、当該広告が炎上商法を意図して出されたものだとは思いません」

広告活動を行う際は、基本的には民間企業であっても、教育機関であっても、「ブランドイメージを高めたい」などの目標が共通していれば、広告活動の内容は共通しているという。小泉教授は広告活動を行う際に必要なステップを挙げた。民間企業でも、教育機関でも、適切なステップを踏めば、広告活動は問題ないと語る。

「当該広告は上記のようなステップが踏まれていたか疑問に感じます。例えば、広報課が伝えたいと思っているグローバル化の表現イメージがあるとします。しかし、学生や教員はそれとは異なる表現イメージを持っていることもあります。当該広告は内部から批判が出ているので、学生や教員からコンセンサスを得ていないのかもしれません。広報課と多くの教員や学生らの間でギャップが生じているなら、そこに問題があります。企画意図と同様にそれがどう表現されたかのコンセンサスを得ることも重要です」

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