立命館大学新聞のコラム欄「海神(わだつみ)」。記者が日々の思いを語ります。
朝、枕元のアラームを止めて、二度寝したい気持ちをぐっと抑えて起きる。体温を測る。顔を洗う。朝ごはんを食べる。歯を磨く。髪の毛を結ぶ。パソコンや教材をリュックに入れて、マスクを着けて家を出る。うとうとしながら電車に揺られ、大学に着いた頃にはもうお腹が鳴る。
こんな生活が始まって4カ月、そして今年度がもうすぐ終わろうとしている。
慣れない課題に頭を抱えながらキャンパスライフを待ちこがれた春学期。初めてだらけの新たな日常に戸惑った秋学期。1年は、あっという間に過ぎた。
新型コロナウイルス、見えない敵に翻弄された1年だった。同時に、これまでの「普通」が決して「普通」ではないことを痛感した1年となった。教室で授業が受けられる。新しい友人ができる。当たり前のようにできると思っていた大学生活へのありがたさを感じられた。オンラインでしか顔を合わせたことのなかった先輩や同級生と初めて実際に会えたときの嬉しさは忘れられない。
自分は、これまでの「当たり前」が崩れる瞬間の立会人のひとりなのかもしれない。そう考えるとこの1年は貴重で、無駄ではなかったと言える気がするのだ。
めまぐるしく変わる世界の中でもがくこの一瞬を、いつかこの先「あの時は大変だったね」と誰かと笑いあえる日が来ますように。
白い吐息が空に消えるのを眺めながら、私は今日も明日も、日常の中で息を潜める小さなきらめきを探すのだ。
(坂口)