1935年の沖縄の景色を100枚の写真で描く「よみがえる沖縄 1935」(立命館大学国際平和ミュージアム・朝日新聞社・沖縄タイムス社主催)が4月13日より立命館大学国際平和ミュージアムで始まった。一部の写真は人工知能技術と住民の記憶によりカラー化されていて、リアルな当時の沖縄像を見ることができる。本企画は巡回展であるが、平和ミュージアム所蔵の沖縄に関する絵画など23点も同時に展示されている。
展示される写真は朝日新聞社のカメラマンが1935年に行った連載「海洋ニッポン」の取材で撮影したもので、戦火に見舞われる前の沖縄の文化や人々の暮らしが映し出されている。フィルムは終戦後に戦争関係の資料が破棄される中、1人の記者が自宅で保管し廃棄を免れた。連載からおよそ80年を経た2013年に朝日新聞社の書庫で発見され、今回の展示に至った。
沖縄タイムスは160枚ほどの写真に映る「名も無き人々」や「戦争で失われた風景」を、聞き取りや古地図との照合などから特定し、40回ほどの連載にまとめた。
この調査と連載を担当した堀川幸太郎さんは「沖縄で最初に展示会をした時におばあちゃんが『戦争で失われた幼少期の記憶を自分でも疑っていたけれど、写真を見て記憶が正しかったと実感した。展示をしてくれてありがとう』と話してくれた」とエピソードを紹介し「戦争はモノを壊すだけでなく人の記憶もゆがめてしまった」と語る。
本企画では平和ミュージアムおよび立命館史資料センター所蔵の沖縄に関する資料も展示されている。学芸員の田鍬美紀さんは「当時の新聞記者が撮影した写真には本土の人が見た『沖縄』という側面がある。当館としては色々な視点から1935年前後の沖縄に関する資料を選出した」と展示の意図を説明する。
また不自然に集団化された農作業の風景写真を挙げて「ノスタルジーだけでなく戦争の『影』が迫っていたということを感じてほしい」と来場者にメッセージを送った。(鶴)
展示期間は6月29日(土)まで。4月27日(土)の13時からは、同館1階ロビーにて朝日新聞と沖縄タイムスの記者が、写真の発見と取材の経緯を語るトークイベントが開催される。予約不要。