国内外の優れた芸術に触れることのできる、特別な空間。時を超えて愛される作品は人を惹き付け、突き動かす力を持つ。今回は、本学キャンパスが所在する京都・滋賀・大阪の美術館を特集する。カフェやワークショップなど、楽しみ方は作品鑑賞だけではない。新型コロナウイルスの脅威が続き、熱中症も危ぶまれる夏休み。涼しく快適な美術館で、1人優雅な時を過ごしてみてはいかがだろうか。
京都市京セラ美術館
リニューアルオープンから1周年を迎えた、京都市京セラ美術館(京都市左京区)は、昭和天皇の即位を記念して、1933年に日本で2番目の公立美術館として開館した「大礼記念京都美術館」をルーツにもつ。「建築様式ハ四周ノ環境ニ応ジ日本趣味ヲ基調トスルコト」という公募要件の下、建築家、前田健二郎の手による和洋折衷の「帝冠様式」が採用され、洋式の鉄筋コンクリートで造られた建物に、和風の屋根が組み合わせられている。大覚寺への疎開や駐留軍による接収を経て、1952年に「京都市美術館」として活動を再開。
2018年には「日本文化の創造と継承の中心地である京都における近代以降の美術を展望できる総合的なコレクションを、世界的な視野に立って形成するために必要な作家の作品及び資料を計画的に継続して収集する」という基本方針が発表され、2020年に「京都市京セラ美術館」としてリニューアルオープンした。リニューアルを機に、常設のコレクションルームが本館に新設された。ここでは、近代の日本画を代表する、明治から昭和にかけての京都画壇の作品群を中心に、洋画、彫刻、版画、工芸、書が紹介されている。四季に合わせた年4回の展示替えによって、いつ訪れても、京都の季節の移ろいを感じることができる。
滋賀県立美術館
約4年の休館を経て、6月27日に滋賀県立美術館はリニューアルオープンを迎えた。新しいコンセプトは「かわる、かかわるミュージアム」。公園内という立地を生かしながら、当館には訪れた人がくつろいで鑑賞できるさまざまな工夫が施されている。
広々としたエントランスロビーとその周辺は、美術館と来館者が出会い、交流する場となるよう「ウェルカムゾーン」と名付けられた。木製のカウンターや県産品である信楽焼を用いた什器が落ち着きのある空間を演出している。カフェも新たにオープンし、公園内を訪れた人がエントランス内で自由に飲食できるよう、食べ物の持ち込みも許可されている。
他にも、地域と協力して小規模な展示を行うスペース「ラボ」や「キッズスペース」などが新たな見どころとなっている。保坂健二朗ディレクター(館長)は「くつろげる公園のなかのリビングルームを目指した」と話す。
現在は、滋賀にゆかりのある若手アーティスト12人の作品を集めた企画展「Soft Territory かかわりのあわい」に加え、近江八幡市にある桑實寺が所蔵する重要文化財の絵巻を軸に当館のコレクションを紹介する「ひらけ!温故知新 ─重要文化財・桑実寺縁起絵巻を手がかりに─」が開催されている。今後も幅広い世代に滋賀の多様な美を伝える企画が順次行われる予定だ。
国立国際美術館
ダイナミックな銀のファサードが目を引く。中之島にある国立国際美術館(大阪市北区)は、世界的にも珍しい完全地下型の美術館だ。主に戦後の国内外の現代美術を収集・展示しており、所蔵作品数は約8000点におよぶ。1年を通してさまざまな展覧会を開催し、現代美術の動向を幅広く紹介している。
1977年の開館当初は万博公園内に位置し、1970年の日本万国博覧会に際して建設された旧万国博美術館を活用していた。しかし、建物の老朽化などを理由に2004年、中之島に新築および移転。現在の建物は、ペトロナスツインタワーなどを手掛けた建築家、シーザー・ペリが設計した。竹の生命力と現代美術の発展ならびに成長をイメージした外観デザインを有している。
館内には展示室だけでなく、人と美術との交流を生み出すパブリック・ゾーンを設けるなど、快適に鑑賞するための工夫が多くなされている。また、講演会やワークショップなど、参加者がより深く現代美術に親しむことができる多彩なイベントを積極的に開催していることも特徴だ。
2022年2月には、当館に隣接して大阪中之島美術館が開館する。両館をつなぐ歩行者デッキも架けられる予定で、中之島を中心としたさらなる芸術文化の発展が期待されている。
(波多野・佐野・石原)