1月24日、2021年度第1回全学協議会代表者会議が朱雀キャンパス(メイン会場)とZoomミーティングを用いたオンラインで開催された。同会議には大学(常任理事会)、学友会、院生協議会連合会、教職員組合、立命館生活協同組合から代表者が出席。2019年度全学協議会からの継続課題の確認と施策について、新型コロナウイルス感染症の影響によって新たに浮き彫りになった教学や学生生活に関わる課題、そして学費、奨学金に関する2022年度以降の解決を目指す課題についてそれぞれ議論がなされた。なお、同会議は新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため代表者のうち対面出席者の人数を絞り、その他の出席者やオブザーバー参加する学生は、オンラインでの参加となった。
以下では、同会議で議論されたことのうち、特に学友会からの論点提起を踏まえた議論を中心に取り上げている。
開会挨拶
2022年度は公開での全学協議会が開催される年度であることや、本会議に向けた協議を踏まえて、2021年度の議論は2022年度全学協議会やR2030チャレンジ・デザインの具体的取り組みに直接つながる機会と位置付けられた。仲谷善雄総長は会議冒頭のあいさつにて「2030年を展望したとき、学ぶ意欲に応える授業の質を、形態の違い、環境の変化を越えて追求しなければならないと強く感じている。また、課外自主活動の重要性も再認識されている。今後も継続して、これからの授業・学ぶ場・課外自主活動のあり方について共に考えていきたい」とし「ワクワクするキャンパス、学生生活を作り出していけるよう議論しましょう」と挨拶を締めくくった。
学友会からの論点提起
(論点1)2019年度全学協議会確認からの継続課題の確認と施策について
まず、学友会から教学と学生生活に関する論点提起がなされた。(*肩書は会議当日のもの)佐藤颯平中央常任委員長(法4)は、教学に関わる課題として「外国語教育」「BBPの活用」の2点をあげ、学生生活に関わる議題として「ダイバーシティ&インクルージョン」をあげた。
外国語教育
外国語教育については英語に焦点を当て、学生の英語の能力に関する調査であるCEFRなどから、本学では高い水準の英語能力を持つ学生が増加傾向にあるとした上で「全学学生アンケート」(2022年1月学友会)の回答をもとに、学生の学びの実感とは乖離していることが学友会から指摘された。さらに、学部ごとに成長実感が異なる点についても言及した。そして成長実感を伴った英語学習の機会の担保が必要であるとの考えを示し「英語教育における到達目標の整理や授業方法などの見直しの検討を求める」とした。
松原洋子副総長は、到達目標について、英語能力に関する一定の目標、具体的にはCEFRB1以上の達成が全学で50%以上という目標を示した。また、2018年度から2020年度のCEFRB1以上にあたる学生の割合の推移から、本学の学生の英語能力が向上しているとの見解を示した。その一方で、この英語能力向上に関する客観的データと成長実感のギャップを分析し、埋める必要があると述べた。さらに「全学的な改革の方法を見据えながら、学部ごとの特性・実態に即した議論が必要である」と主張した。学友会に対して「各学部の状況に応じた現状認識や、これを踏まえた英語学習の見解表明を期待する」とした。
加えて、2019年度の全学協課題において確認された、外国語教育における習得実感の向上について、大学側の4つの対応の進捗を示した。
これに対して、佐藤中央常任委員長から質疑応答にて「4つの対応のうちの『英語+R冊子』に掲載されている英語学習の成長ストーリーは中間層以下の学生に響いているのか」という指摘があった。松原副総長は指摘に対して「一概には言えない。どこを出発点とした掲載内容であれば、中間層に響くのかは簡単には判断できない。中間層はサービスを享受しにくいポジションに陥りがち。縁ができた場を自分なりに生かす機会が、コロナ禍で損なわれている。縁の結び目をより多く作るために大学側も関わりたい」とした。
*CEFR(セファール、シーイーエフアール)
Common European Framework of Reference for Languages:Learning,teaching,assessment(日本語訳:ヨーロッパ言語共通参照枠)の略。言語能力を評価する国際指標のことで、B1は英検2級のレベルに相当する。
BBPの活用
Beyond Borders Plaza(以下、BBP)の活用について、大学側はコロナ禍以前、利用者の目標値を大きく上回っているとしてきたが「全学学生アンケート」(2022年1月学友会)では「BBPを利用したことがない」と答えた学生が大多数を占めており、国際学生と国内学生が希望する双方の交流の多くが実現していないと学友会は指摘した。この現状について、利用者層の固定化やBBP利用の敷居の高さが考えられるとした。一方で、コロナ禍でのオンライン企画が実施されており、そのいくつかは多くの学生を集めることに成功していることから、新規参加学生を十分に集めるための今後のBBPの周知方法や活用方法について、大学側に方向性の提示を求めた。
これに対して、松原副総長はBBPの認知度について、コロナ禍で認知度が低下しているのは事実であるとした上で、広報の強化としてBBPのHPの従来広報に加えて、新入生へのリーフレット郵送、授業担当教員からの学生への情報提供の促進を行ったとした。また、松原副総長は「コロナ禍のキャンパスでの利用制限により、オンラインでの利用をより促進していきたい」とBBPの活用に関する考えを述べた。
この返答に対して、質疑応答にて木村悠生学園振興委員長(情理4)は「仮想化BBPの促進による解決策が提案されていた。しかしITの促進のみでBBPの利用を取り戻すだけでは、BBPがこれまでよりも活用されているとは言い難いのではないか。IT以外の解決策があれば提示いただきたい」と指摘。
松原副総長は「コロナ禍での取り組みに加えて、引き続き、広くアクセスしていただくための解決策を議論していきたい」とした。中本大教学部長は「中間層や『学校に行けるのに行かない』という選択肢を取る学生とBBPなどの居場所を結びつける工夫を学友会と連携し、考えていきたい」と回答した。
さらに、仲谷総長は学友会と大学全体に対して「BBPの問題はより大きな問題として理解している。日本がグローバル社会の中で生きていかなければならないことは共通理解しているにもかかわらず、日本人学生が世界に目を向けない。理由は何かという問いが根底にある。このような課題に学友会とともに考え、取り組んでいきたい」と課題を広く捉えた問題提起をした。
ダイバーシティ&インクルージョン
ダイバーシティ&インクルージョンについて、学友会は、ジェンダーの分野に関する情報を必要な人に届けることを意識した広報を行う必要があるとした。具体的に、学生が通称名を使用することのハードルが高いと指摘。さらに、性の多様性に関するさまざまな取り組みをHPから確認するためにはRAINBOW認証が必要であることから、本学の学生以外は詳細な情報を確認できないことを指摘。入学や入学試験よりも前に本学の取り組みが認知される必要があるとし、現状の把握と方向性の提示を要求した。
伊坂忠夫副総長は学外への情報公開について「2020年12月にまとめられた『立命館大学における性の多様性に関わる学生支援のガイドライン』を学外向けに公開することを検討している」と返答した。また返答の中で、2022年度にはキャンパスダイアリーなどにもダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを盛り込むこと、教職員に対する啓発にも取り組んでいることが示された。(川村)